2024年 5月 6日 (月)

政府が空港運営権を民間に売却 買い手がつくのはどこまでか

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   国管理の空港の「民営化」の動きが活発化している。正確には運営権の民間企業への売却だが、赤字体質の空港経営を立て直し、地域経済の振興にも貢献すると期待され、政府は2014年6月に閣議決定した新成長戦略で、2016年度末までに6空港の売却をめざすとしている。

   ただ、買い手がつくのは一定規模以上に限られそうで、取り残される形の弱小空港の経営はむしろ厳しさを増すと予想され、国のかじ取りが注目される。

  • 国のかじ取りが注目される
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滑走路と空港ビルなどの運営を一体化し、自由な裁量で運営

   最近話題の民営化は「民活空港運営法」(2013年施行)に基づくもの。土地、建物などの施設を含めて売り出す「完全民営化」とは違い、運営権を民間に売却する「コンセッション方式」と呼ばれる手法だ。

   一般に、国が管理する空港は、滑走路は国が所有し、着陸料などの使用量は国がほぼ一律に決めている。一方、空港ビルは自治体が出資する第三セクターが所有して運営する、という形態が多い。要するに、離着陸と、その前後の乗降の際の施設利用について、運営主体が異なるということだ。

   空港民営化論の眼目も、まさにこのバラバラ状態を解消することにある。つまり、滑走路と空港ビルなどの運営を一体化し、自由な裁量で運営できるようにすることで、例えば空港ビルの物販で収益を上げた分を原資に着陸料を下げ、格安航空会社(LCC)を誘致するなど就航路線の拡大を図る、といった空港独自の取り組みが可能になるわけだ。

   コスト的にも、一体運営することで、管理部門はもちろん、現業部門の重複業務などを見直すことでコスト削減が期待できるはずだ。

   現在、「民営化」の作業が進んでいるのは、仙台空港、福岡空港、高松空港(2018年春めど)。このほかに、国管理でなく新関西国際空港会社が運営する伊丹(大阪国際)空港・関西国際空港が一体民営化されることになっており、最低価格2兆2000億円で45年間の運営権の入札手続きが進行中で、2015年7月をめどに新運営権者が決まる見通しだ。

福岡空港は早ければ2018年をめどに民営化

   国管理では、仙台(乗降客数全国10位)が先行している。2011年3月の東日本大震災で津波被害を受けたのは記憶に新しい。宮城県の村井嘉浩知事が積極的に主導、2014年12月の1次審査にイオングループ・熊谷組、東急電鉄・東急不動産など、三菱地所・ANAなど、三菱商事・楽天の4陣営が手を挙げ、2015年1月に全部が2次審査に進み、8月をめどに優先交渉権者を選定し、2016年春に第1号として運営委託する計画。

   仙台空港の乗降客者は2006年度に339万人と過去最高を記録した後は減少に転じ、大震災の影響で2011年度は185万人まで落ち込んでいたが、その後回復し、2014年度は323万人まで回復している。県は民営化により、30年後に600万人に増やすなどの目標を掲げており、目標を達成すれば県内総生産を330億円(0.4%)押し上げるとの民間試算もある。

   福岡空港(3位)は早ければ2018年をめどに民営化する計画で、福岡県、福岡市が2014年11月に同意し、入札への準備段階で、西鉄やJR九州など地元大手企業や、現在空港ビルを運営している第三セクターの福岡空港ビルディングが手を挙げる意向を示している。大型空港だけに、売却額は1200億円を下らないといった見方が囁かれている。

   これらに続いて手続きに入るのが高松空港(21位)で、2018年春の民営化を目指す。このほか、新千歳(4位)、広島(14位)なども民営化を検討中だ。

営業黒字は7空港にとどまる

   ただ、民営化にはプラス効果の一方、マイナス面も指摘される。

   国交省は2012年度の国管理27空港の収支試算結果をまとめている(2014年7月発表)。それによると、滑走路など空港本体の事業で営業黒字を確保したのは新千歳、小松、熊本の3空港だけで、空港ビルなど関連事業は2012年開業の岩国(山口県)を除き黒字だったが、両事業を合計した収支の営業黒字は、本体事業黒字の3空港を含め7空港にとどまる。

   現在民営化を進める空港はそれぞれの地方の中心都市にあり、空港としての規模も比較的大きい。そこが民営化で身軽になり、LCC誘致などに励めば、就航路線が増え、乗降客も増え、利益を上げる可能性は高いとみられる。ただ、そのことで周辺空港に打撃を与える可能性もある。例えば、仙台の民営化で新路線などが増えれば、山形空港などから乗客が現在以上に仙台に流れるとの懸念が出ている。

   空港間が競争するのは当然ともいえるが、空港の損益分岐点となる乗降客数は年250万~260万人との試算もあり、これに該当する国管理空港は羽田、福岡以下11だけ。地域の人口や経済力に差がある中では、空港間格差、ひいては地域間格差を広げる恐れもある。防災、災害対策の上でも空港が「淘汰」されるような事態は避ける必要があり、単純な空港間競争でなく、一定エリアの複数の空港の経営を一体化し、全体で黒字を目指すなど、国の政策の方向性も問われる。

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