2024年 5月 2日 (木)

あなたの「便」が人の命を救うかも 腸内環境が改善するドッキリ治療法

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   近年、注目度が高まっている腸内細菌。その数は100兆個と言われ、体ばかりか脳や心の健康にもかかわっているとの研究発表もある。

   大腸の病気の治療として腸内細菌を活用する研究も進んできた。健康な人の「ある物」を患者に移植するのだが、その「正体」は驚きだ。

  • 「健康な便」はとても貴重
    「健康な便」はとても貴重
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便と生理食塩水を混ぜ、フィルターでろ過し腸内に注入

「『糞(ふん)便移植療法』という新しい治療法に取り組んでいます」

千葉大学医学部付属病院が2015年5月7日、こう題したリリースを出した。これは、健康な人の便と生理食塩水を混ぜ、フィルターでろ過して液体化し、これを注射器に入れて内視鏡を使って患者の腸内に注入する新しい治療法だという。国内では2014年に慶応義塾大学病院や順天堂大学医学部付属病院が臨床研究を開始、千葉大病院も2015年3月に1例目の臨床研究を実施した。

   千葉大病院の中川倫夫助教(消化器内科)は発表資料の中で、「糞便移植法は、難治性の感染症腸炎、炎症性腸炎、過敏性腸症候群などに有効であると報告されています」と説明している。

   他人の便を自分の腸内に入れる――。なかなか衝撃的な方法に聞こえるかもしれないが、難病に対して有効な治療法として期待は大きい。2015年6月10日放送の「ためしてガッテン」(NHK)でも、この治療法を紹介した。2012年にはオランダの研究者が、血糖値の下がりにくい体質を持つ人に健康な人の腸内細菌を移植する研究を進めていたという。番組では米大学を訪れ、糞便移植法(番組では「便微生物移植」と紹介)をリポートした。大腸の治療のために行われ、糖尿病の治療としてはまだ研究段階だそうだ。

ドナーが様々な検査をパスした「選りすぐりの便」

   もちろん、誰の便でもよいわけではない。先述した千葉大病院の発表資料には、便の「ドナー」となる人は、倫理上の観点から「二親等以内の親族」であることを義務付けている。さらに、同病院消化器内科で実施している臨床研究により定められた様々な検査をパスした「健康な糞便」でなければならない。

   米国での様子は、CNN電子版(日本語)が2015年10月12日付の記事で報じている。マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者らがつくった「オープン・バイオーム」という施設が、健康な人の糞便を集めている。ドナーに選ばれるのは「109点に及ぶ臨床評価項目を通過」した人に限られる。肥満だったり、違法薬物や抗生物質の使用があったりすると「失格」だ。候補者の中で選抜の末に残るのは、全体の3%に過ぎない。ドナーの便は、1サンプルにつき40ドル(約4800円)で買い取られる。

   こうした選りすぐりの便を移植することにより、1日20回トイレに行っていた患者が、移植直後から翌日には腸の動きが正常になる、という研究責任者のコメントを、CNNでは引用している。

   ドナー探しは簡単でないようだが、海外では糞便移植法が腸の病気の治療だけではなく、腸内細菌との関連があるとみられる肥満や動脈硬化、神経疾患の患者向けにも行われていると、日経産業新聞が2015年7月3日付で報じた。将来的には広範囲にわたる活用が期待できそうだ。

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