2024年 4月 30日 (火)

政府機関「地方移転」で霞が関が「最後の抵抗」 結局、「大山鳴動」で終わるのか

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   政府が2016年3月中に方針を取りまとめる政府機関の地方移転をめぐり、調整作業が大詰めに差しかかってきた。候補34機関のうち、焦点になるのが中央省庁の7機関。省庁側と候補地の8道府県の、有識者を交えた意見交換会も1月27日に都内で開かれた。しかし、省庁側は全般に消極姿勢で、担当閣僚と官僚の温度差も鮮明になった。

   安倍晋三内閣の「地方創生」の目玉の一つだけに、「移転ゼロはありえない」(政府関係者)とされる。しかし、参院選を前に成果をアピールするネタになりうる半面、関係者の反発を招く恐れもあり、首相は難しい判断を迫られる。

  • 国会対応、職員の大幅転勤などから、政府機関の地方移転に難色を示す省庁・関係団体は多い
    国会対応、職員の大幅転勤などから、政府機関の地方移転に難色を示す省庁・関係団体は多い
  • 国会対応、職員の大幅転勤などから、政府機関の地方移転に難色を示す省庁・関係団体は多い

文化庁、消費者庁は、大臣vs官僚の構図に

   政府関係機関の地方移転は、政府が民間企業の本社機能の地方移転などを要請していることから、「政府も範を示す」(石破茂地方創生担当相)として、2014年末に閣議決定された「地方創生の総合戦略」に盛り込まれた。自治体からの提案を踏まえ、2015年12月に中央省庁7機関を含む計34機関を検討対象とした。

   地方自治体には、企業の地方移転を誘発し、地方経済の活性化につながるといった期待があるが、霞が関には、国会対応、民間との関係、職員の大幅な転勤などから難色を示す省庁や関係団体が多い。

   検討対象の7機関(カッコ内は誘致候補地)は、観光庁(北海道、兵庫)、特許庁(大阪、長野)、文化庁(京都)、消費者庁(徳島)、総務省統計局(和歌山)、中小企業庁(大阪)、気象庁(三重)。なかでも注目されるのが、担当閣僚が積極的な文化庁と消費者庁だ。

   文化庁について馳浩文部科学相は、1月14日に山田啓二京都府知事から直接要望を受けて「移転を前提に検討する」と伝えた。政府内では京都に事務所を新設し、文化庁長官を常勤させる案を検討。段階的に文化財保護の関係部署を移す段取りを描く。しかし、27日の意見交換会で文科省担当者は「検討が必要」などと、のらりくらり。移転問題に関する政府の有識者会議座長を務める増田寛也元総務相からは「文科相の発言と違う」と苦言を呈された。

   消費者庁をめぐっては、河野太郎消費者担当相が15日の会見で「3月末時点で『ノー』とはならない」と述べた。3月に消費者庁長官ら幹部を1週間程度、試験的に徳島県に勤務させる「お試し移転」も実施する方針を示している。だが、こちらも消費者庁の担当者は27日の意見交換会で、候補地の徳島県を「消費者センターの設置状況は全国平均を下回っている」など、消費者行政への貢献を訴える県の主張に水を差す主張を展開した。

   閣僚が前向きな両庁でもこうだから、他の5機関は推して知るべし。中小企業庁や特許庁を所管する林幹雄経済産業相が「東京から移転するのはマッチしない」、石井啓一国土交通相は「気象庁は危機管理業務を担っている。観光庁は国会などと対面業務が必須だ」、また総務省統計局が候補になっている高市早苗総務相も「専門人材を地方で確保できるかも論点だ」など、難色を示している。自治体側でも、観光庁を誘致している北海道は、全面移転は難しいとの判断から、国交省・北海道運輸局の観光部門の機能強化といった「現実的対応」に舵を切った。

   中央省庁以外の独立行政法人の研究機関などでも組織全体の移転を打ち出したのはごく一部で、大半は一部機能の移転などにとどまるとの見方が強い。

全国紙も社説で賛否真っ二つ

   地方創生に総論で反対する人はいないが、各論で反対が出るのは、ある意味では当然で、単純に「官僚のエゴ」で片づけられない難しい問題なのは間違いない。このため、大手紙もかなり慎重な論調だ。

   特に発足から6年半と基盤の弱く、霞が関全体の「いけにえ」にされているとの声も出る消費者庁については意見が割れる。「日経」は、国会対応や他省庁との連携を理由にした反対論に対して、「テレビ会議の活用など政府内部の仕事の進め方を見直せば不可能ではないはずだ」(2015年12月30日社説)と、文化庁とともに移転を迫る。一方、「朝日」は「消費者団体や日本弁護士連合会も反対を表明している。最終判断を急がず、移転の是非を慎重に見極めるべきだ」(2016年1月18日社説)、「毎日」も「消費者事故への対応や関係省庁との調整などに支障を来さないか、疑問がある」(1月21日社説)と、否定的だ。

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