2024年 4月 19日 (金)

いまどき預金金利を「引き上げる」信用金庫が相次いでいる 「マイナス金利」なのに可能な理由とは

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   日本銀行のマイナス金利政策を受けてメガバンクや地方銀行が軒並み預金金利を引き下げるなか、信用金庫の一部で、逆に金利を引き上げる動きが出てきた。

   地域に住む預金者から、「預金金利もマイナスになるのか」「預金口座に手数料がかかるのか」と、窓口への問い合わせが相次いだためだ。

  • マイナス金利のなか、信用金庫が預金金利を引き上げた!(画像は、熊本第一信用金庫のホームページ)
    マイナス金利のなか、信用金庫が預金金利を引き上げた!(画像は、熊本第一信用金庫のホームページ)
  • マイナス金利のなか、信用金庫が預金金利を引き上げた!(画像は、熊本第一信用金庫のホームページ)

「発売以来、問い合わせが殺到しています」

   熊本市に本店を置く熊本第一信用金庫は2016年2月10日、「若者金利アップ定期預金」の取り扱いを開始した。新規預け入れの1年満期の定期預金対象に、50歳未満の個人が50万円以上を預け入れる場合の金利を、それまでの年0.025%から年0.1%に、50歳以上の個人で100万円以上預け入れる場合には年0.08%に引き上げた。

   「預金者に与える『マイナス』の印象が強く、地域には不安が広がっています。それを払しょくしたいことに加えて、なかでも子育て世代にあたる50歳未満の方々は教育資金や住宅ローンの負担があります。それを少しでも軽減したいと考えています」と、預金金利の引き上げ理由を説明。発売以来、「問い合わせが殺到しています」と話す。

   一方、福岡県岡垣町に本店を構える遠賀信用金庫は、日銀が1月29日にマイナス金利政策を発表して以降、預金で資金を運用する年金生活者を中心に不安を口にする人が増えたという。

   そこで、マイナス金利が導入された2月16日にあわせて、金利を上乗せする定期預金を発売。「少しでもマイナスな雰囲気を緩和し、安心感をもっていただきたいと考えた」としている。また、この商品を通して高齢者のタンス預金を防ぎ、ニセ電話詐欺などの抑止につなげたいともいう。

   対象は個人で、預入限度額は20万円以上300万円以下(ひとり300万円まで)。「年金」「給与振込」「公共料金の自動振替2種目以上」のいずれかの取引がある人は年0.2%、貸金庫契約者は年0.3%で受け入れる。預金の種類はスーパー定期預金1年物。募集金額の上限は30億円で、到達時点で締め切る。

   西武信用金庫(東京都中野区)も、3月1日から預金金利を引き上げる。預入期間が3年~5年物の定期預金の金利を、3年物と4年物は店頭表示金利に0.01%を上乗せ、5年物は0.02%を上乗せする。2月16日時点でのできあがりは3年物で年0.04%になる。

   預け入れは1円から。金利は、スーパー定期300万円未満と300万円以上、大口定期預金(1000万円超)の3段階に分けて適用する。預金は法人からも受け入れ、「手元資金の運用に活用してほしい」という。

   全国信用金庫協会は「すべてを把握しているわけではありません」と話すが、他の信用金庫でも預金金利を引き上げる可能性がないわけではないとみられる。

信用金庫には「もう一つの日銀」がある

   マイナス金利の導入で、銀行では預金金利の引き下げが相次ぐなか、なぜ信用金庫でこうした「逆バリ」が可能なのか――。

   預金の高金利は、金融危機が起こった1990年代後半~2000年代前半には預金が集まらず(資金調達できず)に困っている、「危ない」金融機関などといわれたが、最近は「もう、そんなイメージはなくなりました」(熊本第一信金)という。

   もともと信用金庫の資金調達は市場の割合が少なく、預金に支えられている。営業地域も狭く、決まっていることもあって、銀行のように「集まりすぎ」の心配も少ない。熊本第一信金は「運用に問題ありません」と話す。

   また、預金金利は現状、限りなくゼロに近い。仮に預金金利を引き上げて年0.1%にしたとしても、100万円を1年預け入れても利息は1000円にしかならないのだから、話題性や預金の歩留まりを考えれば、プラスと判断してもおかしくない。

   さらに、個々の信金の背後には「信金中央金庫」の存在がある。信金中金は信金の上部組織で、全国の信金から預金を受け入れている。つまり、個々の信金は日銀への預金のほかに、信金中金という「もう一つ」の運用ツールをもっていることになる。マイナス金利を導入していない信金中金に預け入れておけば利回りを確保できるため、日銀への預金で生じるマイナス金利分を補うことができるというわけだ。

   西武信金は預金の運用について、「株式や債券、融資を伸ばすことも運用です」としたうえで、「(信金中金は)預入先の一つではあります」と話す。

   預金を受け入れる信金中金は、全国の信金から一律の金利で受け入れているが、「(預金金利については)公表していません」という。

   1月末の残高は134兆8518億円。前月比は0.6%減だったが、前年同月比では2.3%増えた。「残高は増えています。ただ、まだ(マイナス金利の導入が)はじまったばかりなので、今後どうなるのか、注視していきたい」と話している。

   なにしろ信用金庫は全国に250もある(2016年2月15日現在)。地元をさがせば、預金金利を引き上げている信金はまだあるかもしれないし、預金するなら、「地元の信用金庫がオトク」ということになるかもしれない。

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