2024年 5月 2日 (木)

「1人年3500万円」の新薬 医療財政を破綻に追い込む?

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   たった1種類の薬剤が国の医療制度が揺るがしている――そんな懸念が広がっている。2015年12月に肺がん治療薬として承認された「オプジーボ(一般名ニボルマブ)」のことだ。厚生労働省も中央社会保険医療協議会(中医協)で適正使用のためのガイドライン(指針)作成に動き始める事態になっている。

   抗がん剤オプジーボは2014年9月、発売された。まず皮膚がんの一種「悪性黒色腫(メラノーマ)」向けとして承認され、肺がんにも保険適用が拡大された。がん細胞には免疫細胞の攻撃を防ぐ仕組みがあるが、これを解除する新しいタイプの薬だ。ただ、薬代は驚くほど高く、標準的な投与方法で1人年間3500万円に達する。

  • 新しい肺がん治療薬の薬代は1人年間3500万円に達するという(画像はイメージ)
    新しい肺がん治療薬の薬代は1人年間3500万円に達するという(画像はイメージ)
  • 新しい肺がん治療薬の薬代は1人年間3500万円に達するという(画像はイメージ)

適正使用に向けたガイドラインを年内策定へ

   公的な医療保険制度では自己負担は原則3割だが、月ごとの上限を設けた「高額療養費制度」があり、薬剤費は税金や保険料で賄っている。オプジーボの場合、投与対象は5万人ほどとされ、仮に全員に使われると、その薬剤費は3500万円×5万人で年間1兆7500億円。国全体の医療費は40兆円を超え、うち薬剤費は10兆円を上回るとされるが、実にその2割近くを一つの薬剤で占めることになる計算だ。

   オプジーボほどではないが、他にもC型肝炎治療薬「ハーボニー」(2015年9月の発売時、服用終了までの3か月分で670万円の薬価とされ、その後、約3割引き下げ)や高脂血症治療薬「レパーサ(一般名エボロクマブ)」(1回2万2948円と高額ではないが、長期間投与が必要)などもある。今後、高額薬剤が続出するとみられ、「医療財政はこのままでは破綻しかねない」(財務省筋)。

   こうした事態を受けて厚労省は、適正使用に向けたガイドラインを年内に策定する方針を打ち出し、7月27日の中医協で議論を始めた。薬ごとに各分野の学会などと共に作成する。具体的には、薬が効きやすい患者を調べて投与するのは効果の期待できるケースに限ったり、大きな副作用の恐れのある患者への使用を控えたりすることなどを検討。また、副作用に対応できる医療機関や医師に限定して使用を認める方針で、指針に従わなかった場合は、公的医療保険を適用できない仕組みも検討する。

   対象はオプジーボやレパーサなど4剤として2017年度中の適用を目指すとともに、今後承認される高額の新薬は、原則として指針の対象とする方針だ。

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