2024年 5月 1日 (水)

「待機児童の解消」にあっさり白旗 甘かった政府の想定

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   待機児童問題が一向に前に進まない。政府は2017年度末までに待機児童を解消するという目標を掲げてきたが、安倍晋三首相が「非常に厳しい状況」とみとめ(2月17日)、早々に白旗を上げてしまった。「過少計上」の自治体があると指摘される待機児童の「定義」の統一も2018年度に先送りされた。政府は6月に新プランを策定する考えだが、受け皿拡大や新たな対策に必要な財源をいかに確保するかの見通しもたっていない。

   現行の「待機児童解消加速化プラン」は、2017年度末の待機児童解消に向け、2013~17年度に保育の受け入れ枠を50万人分確保、そのために保育士数を5年間で約9万人分確保する目標を掲げた。実績を見ると、2013~15年度に保育受け入れ枠31.4万人分を確保済みで、2016年9月時点では残る2年間でさらに18.6万人分以上増えると見込み、50万人は達成できるとしている。

  • 待機児童問題の政府の想定は甘かった(画像はイメージです)
    待機児童問題の政府の想定は甘かった(画像はイメージです)
  • 待機児童問題の政府の想定は甘かった(画像はイメージです)

2017年度末の待機児童解消は「困難に」

   ただ、厚生労働省のまとめによると、2016年4月時点の待機児童は2万3553人と、2年連続で増加、さらに同10月1日時点では4万7738人と、1年前より2423人多く、2年連続での増加になった(10月は年度途中に育児休業が明けるなどのため4月の2倍くらいになるのが例年の傾向)。

   このため、安倍首相自ら、2017年度末の待機児童解消が困難になったと表明せざるをえなくなった。働く女性の増加で保育を利用する人が想定以上に増加したと、政府は釈明する。逆に言えば、政府の想定が甘かったということになる。

   そもそも、待機児童については、定義さえ統一されていないという大問題がある。J-CASTニュースも2016年9月20日の「表面化した『隠れ待機児童』数 それでも実態が不透明なワケ」で詳述したように、例えば、親が自宅で休職中や育休を延長したケースを待機児童に含める自治体と、含めない自治体があるなど、実態さえ十分につかめていない。厚労省の数字も、正確に実態を反映していないことになる。

   さすがに厚労省も拙いと判断し、定義を統一するための有識者と自治体関係者の検討会を2016年9月に発足させた。2017年3月中に新基準を設け、2017年4月時点の集計から適用する考えだったが、1年先送りされた。

新定義で待機児童数が跳ね上がるのは確実

   定義の統一の中身は3月30日の検討会で固まっている。現在、厚労省の通知で、保護者が育休中の場合は「待機児童に含めないことができる」とされるのをはじめ、特定の保育所のみを希望している▽求職活動をしていない▽自治体が独自補助する認可外施設を利用しているなどの場合は待機児童数に数えない。これが自治体間の判断のばらつきの原因だとして、新定義では、親が育休中で、保育所に入所できた時に復職する意思の確認ができる場合は、新たに待機児童に含めるとしている。

   厚労省によると、認可保育所に入れず、かつ待機としてもカウントされていない「隠れ待機児童」は2016年4月時点で約6万7000人と、表向きの待機児童数の3倍近くに上っており、新定義で待機児童数が跳ね上がるのは確実だ。

   厚労省は「可能な自治体には2017年4月から新定義での集計を求める」としているが、自治体の準備が整わないことを理由に実施を2018年4月集計からに先送りしており、「2017年度中に待機児童ゼロという目標未達成は避けられないにしても、待機児童数があまり大きくならないよう、新定義適用を先に延ばしたのでは」(全国紙家庭部デスク)との見方もある。

   2016年には「保育園落ちた、日本死ね」のネットの書き込みであれだけ問題になっただけに、安倍政権も放置はできないとして、急きょ、6月に2018年度以降の待機児童対策の新プランをまとめる方針を打ち出している。

財源の確保が課題

   プランの大前提になるのが保育ニーズの把握、つまり保育園を希望する児童をどう見積もるかだ。実際には、国の計画は、自治体の見込む数字の積み上げだから、定義がバラバラでは信頼できる数字が集計できるわけがない。定義の統一は、出発点を整える意味で一歩前進といえる。

   目標の数字がまとまったとして、そこには財源という大きな壁が立ちはだかる。 自治体による保育所整備に加え、厚労省は一定の基準を満たす「企業主導型保育所」などを増やす方針だが、そのために認可保育所並みの補助金を出す必要があるなど、財源の確保が課題になる。

   日本総合研究所は2020年からの5年間で0~2歳児の保育需要が2万人分増えるとして、そのための保育所運営費の増加は国費分だけで100億円程度になると試算している。

   また、保育士不足が深刻化する中、人材を確保するために待遇を改善し、職員の配置を手厚くするための財源確保も不可欠だ。政府はこれまで、必要職員の配置基準などを緩めて受け入れ枠を増やす応急措置を取ってきたが、保育中の死亡事故も後を絶たず、保護者からは安心して預けられる保育所を求める声が強まっており、これもお金がかさむ要素だ。

   自民党内には、保育充実を含む財源対策として「こども保険」構想なども出ているが、先行きは見通せない。2019年10月に消費税を予定通り引き上げるかも含め、財源をいかに確保するか、政府の「本気度」が問われている。

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