2024年 4月 30日 (火)

カタール情勢が引き金に? 原油「協調減産」に忍び寄る「陰」

建築予定地やご希望の地域の工務店へ一括無料資料請求

   石油輸出国機構(OPEC)が、2017年1月から実施中の協調減産を、18年3月まで9か月延長することを決めた。原油のだぶつきを引き締め、価格を押し上げようという狙いだが、その後、原油相場は反転の兆しはない。また、ここにきて中東の地政学的なリスクの再燃の気配もあり、原油価格の先行きが一段と読みにくくなっている。

   OPECは17年5月25日、ウィーンでの総会で、6月いっぱいを期限に実施している減産の延長を決めた。総会後、ロシアなど非加盟国を交えた会合を開き、協調減産の継続を確認した。OPEC諸国が16年10月に比べて日量120万バレル、非加盟国が60万バレル減らすという減産規模は維持する。

  • (画像はイメージです)
    (画像はイメージです)
  • (画像はイメージです)

シェールオイル生産とのイタチごっこ

   国の財政の多くを原油に頼るOPECなど産油国にとって、原油価格下落による収入減は国家の存立にかかわる。減産して価格が持ち直さなければ、さらに収入が減るだけに、いわば、協調減産は背水の陣ということになる。

   産油国をここまで追い込んだのは「シェール革命」だ。米国を中心に、それまで採掘が難しかった頁岩(シェール)層に混ざった状態のオイルを取り出す技術開発が進み、シュールオイルの産出量が増え、原油相場の強烈な下押し要因になってきた。原油相場は2008年の1バレル=140ドル台をピークに、50ドル以下のレベルまで下落させ、16年1月には20ドル台まで押し下げた。

   さすがに、このレベルまで落ちると、シェールオイルの損益分岐点を大きく下回り、シェールオイルの生産が減り、価格が上昇に転じる。しかし、一定価格以上に上がるとシェールオイルの生産が再び増え、価格がまた下落し......という「イタチごっこ」状態で、ザックリ言って、概ね1バレル=50ドルをはさむボックス圏の相場という格好になっている。

   今回の合意の効果も、思わしくない。OPEC合意が伝わった5月25日のニューヨーク市場の原油相場は、指標銘柄のWTI先物が一時、前日比5%下げ、1バレル=48ドル台になった。減産延長は織り込み済みで、減産幅の拡大がなかったことが、むしろ失望を呼び、利益確定売りが膨らんだという。原油相場は5月31日には一時、47ドルを割り込むなど、弱含みで推移している。

リビア、ナイジェリアの動向にも注目

   今後の見通しも弱気な材料が多い。OPECなどの減産継続は、だぶつく在庫を減らし、相場を押し上げようという狙いだが、経済協力開発機構(OECD)加盟国の石油の商業在庫(3月時点)は30億バレルと、OPECが目標とする28億バレル(過去5年の平均)を大きく上回ったまま。足元の需給も、「日量ベースで80万バレル、供給が需要を上回っている」(業界筋)という。もちろん、米シェールオイルの増産のためだが、今回の減産延長に市場が冷ややかなのも、「減産幅拡大の期待を裏切られたから」(同)だけに、相場反転の糸口はなかなか見えてこない。

   減産の足並みにも懸念がある。OPEC加盟国ながら、反政府勢力の攻撃などで生産が落ち込んでいるリビアは今の減産の枠外。しかし、その生産量は4月の日量55万バレルから、5月下旬には80万バレルのレベルまで膨らんでいるという。内戦状態で破壊された生産設備の復旧が徐々に復旧しているのだ。同様に減産枠外のナイジェリアも含め、もし両国がフル稼働に戻れば、協調減産の大部分が吹き飛びかねない。

   地政学的リスクの相場への影響は読みにくい。直近のニュースはサウジなど中東4か国のカタールとの断交。日本では一枚岩のように思えるサウジ、UAEなど湾岸諸国の中で、イランとの関係が良いカタールとの断交は、かねてイランと対立するサウジが、対イラン強硬派の米トランプ政権発足を受け、イラン封じ込めを本格化させたものだ。

   カタールがサウジなどに反発し、協調減産から離脱するようなことになれば、協調崩壊の引き金になりかねない。逆に、カタールの米空軍基地がテロ組織掃討の主要拠点になっていることから、地域の緊張が高まって、原油相場を押し上げる要素になるかもしれない。

   国内では、さすがに2016年前半の1バレル=40ドル割れよりは原油価格が持ち直している分、ガソリン代や光熱費などが上昇基調になっている。レギュラーガソリンは1リットル=130円台と、16年春より20円ほど高く、業界では「当分、このレベルが続くだろう」との声が強い。電気や都市ガス料金も上昇しているほか、国際線の航空運賃の燃油サーチャージ(燃油特別付加運賃)が復活しており、今後は運賃自体の値上げを予想する向きもある。

姉妹サイト

注目情報

PR
追悼
J-CASTニュースをフォローして
最新情報をチェック
電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中