2024年 5月 6日 (月)

中国人が神格化する「ドイツ製」 引き立て役は「自国製品」

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   中国で車を運転しながらラジオを聞くと、「とてもドイツ的」というキャッチフレーズが何度も流れてくる。ドイツと言えば「謹厳」というのが中国人の第一印象だ。自動車から爪切りまで、中国人はドイツ製を非常に高く評価しており、ドイツの「国民性」に至っては神格化すらさせている。自分たちが中国人の心の中で超俗した存在になっていることを、8000万人のドイツ人は知りもしないだろう。

  • 中国で「ドイツ製」というブランドが引き立つ理由は
    中国で「ドイツ製」というブランドが引き立つ理由は
  • 中国で「ドイツ製」というブランドが引き立つ理由は

青島の下水道のデマ

   中国人がドイツ製に対して「迷信」を持っていることは、以下の2つのデマからもうかがい知ることができる。中国国内の大都市で冠水が発生するたびに微博(ウェイボー、中国版Twitter)や微信(Wechat、中国版LINE)には、次のような都市伝説が流れる。

「青島で都市型水害が滅多に起こらないのは、青島には100年前にドイツの植民地だったときに造られた下水道システムがあるからだ」。

   この話には補足がある。ドイツ人はスムーズに部品交換をするため、下水道の中に部品のスペアが揃った倉庫(部品のスペアを油紙に包んで保存しているという説もある)も配置したため、100年後になっても中国人は当時の企業に連絡することができ、中国人にスペアの場所を教えてくれた、というものだ。多くの中国人に「ドイツ人はきっとこのように謹厳なのだ」と思われている。

   しかし実際、青島に冠水が極めて少ないことと、ドイツ人の下水道には全く関係がない。

   ドイツが青島を統治していた時、おおよそ80キロメートルにわたる下水道を造ったが、100年近く経ってから作り直され、今では3キロメートルほどしか残っていない。これは3000キロメートル近い青島の下水道の全長の1000分の1である。

   青島に冠水が少ない理由は主に地形のおかげである。青島市は西高東低の土地で、三面が海に面しており、洪水が起きても容易に海に排出することができる。もちろん、青島は確かにドイツの下水道排水の設計理念を参考にしているが、このこととドイツ製は全く関係がない。

「品質」と「安全」のイメージ

   細部まで感動的な「部品の包み」の話は青島の下水道に限らず、蘭州の中山鉄橋でも新たに登場している。

   2014年に蘭州市政府の公式微博アカウント「@微博蘭州」が、次のようなコメントを発表した。

「鉄橋成立から100年経った2007年、蘭州市政府は鉄橋の設計士であるドイツ人の家族から手紙と小包を受け取った。手紙には鉄橋の設計寿命がもう限界であり、都市の管理部門にメンテナンスさせるために、小包の中に補修パーツのサンプルを入れたと書かれていた」

   残念ながらこれもデマである。しかも、このデマの作成者は蘭州市政府の公式微博アカウントだ。

   1907年に造られた中山鉄橋の設計寿命は80年であり、もしドイツ人が本当にそんなに謹厳であるなら1987年にパーツを送るべきだろう。だが、1987年に送られることはなかった。何故なら鉄橋工事を請け負ったドイツの企業は1946年にとっくになくなっているからだ。そして、蘭州の中山鉄橋は1949年以降幾度も補強・補修工事をしているので、そもそも「補修パーツのサンプル」など必要ないのだ。

   この2つのデマが、極めて広く中国で流布した大きな原因は、「ドイツ製」が中国で非常に高い信頼を得ているからである。多くの中国人にとって「Made in Germany」は疑いようもない品質と「匠の精神」の象徴なのである。

   これは中国人のせいばかりではない。中国に限らず、ドイツ製は世界中で親しまれている。統計サイトStatistaと市場調査会社Dalia Researchが協力して、世界の4万3000人の消費者に行った調査と研究によると、消費者の好感度第1位がドイツ製だったことが明らかにされた。この調査では、中国で高く評価されている「日本製」は8位だった。ドイツ製のイメージは「品質」と「安全」である。

乱用されるドイツ製「ラベル」

   ただ、ドイツの製造業が確かに「人類が到達できる品質の範疇を超えている」としても、顧客が購入したドイツ製の製品は本当にその顧客が考えている通りのドイツ製だろうか。

   「100年の歴史を持つドイツ製」という言葉が、今では巨大なセールスポイントとなってしまったため、中国でも「ドイツ製」ラベルが甚だしく乱用されている。安価な労働力が不足しているドイツは大量の生産を発展途上国にアウトソーシングする一方で、各国の工場は交易を通して「ドイツ製」の皮をかぶろうとしている。

   「ドイツ製」ラベルが貼られた一つの製品に対し、具体的にどれほどの工程をドイツで行う必要があるのかという基準についてEUは明確に線引きをしてはおらず、一つの製品の90%が海外でつくられていても、最後の工程がドイツで行われていた場合、ドイツの会社は2倍以上の利益を得るという前提でドイツ製のラベルを貼り、最高の価格をつけられるのである。

   しかし、中国人がドイツ製を神格化するのは、それらの製品自身の品質が確かに素晴らしいこと以外に、もう一つ重要な理由がある。それは、中国の同業者の製品が、ドイツ製の素晴らしさを引き立たせてくれるということだ。

(在北京ジャーナリスト 陳言)

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