脳卒中によるダメージから脳を保護する秘密 森に住む小さなあの生き物にあり?

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   なんらかの理由で脳への血流が遮断され酸素が供給されない状態が長時間続けば、最悪の場合死に至り、運良く助かっても身体機能に障害や麻痺が残る可能性が高い。

   しかし、動物の中には脳の血流量が数か月に渡って減少しても問題なく身体機能を回復するものがいる。冬眠を行うリスやクマなどだ。

   冬眠をしても脳が損傷しない仕組みを解明すれば、人でも脳卒中によるダメージを防げるのではないか、と考えた米国立神経疾患・脳卒中研究所のジョン・ヘレンベック博士らは、リスを対象にした調査結果を2017年11月16日に発表した。

  • リスが脳卒中から人を救う、かも
    リスが脳卒中から人を救う、かも

リスは冬眠中でも脳にダメージなし

   かつては日本人の三大死因とされていた脳卒中などの脳血管疾患も最近は死亡数が減少しており、厚生労働省が発表している「人口動態統計」の中でも死因では4位となった。

   とはいえ年間発症者数は約29万人、米国でも約79万人とされており、決して珍しい病気ではない。

   脳卒中の中でも、血栓によって血流が遮断され脳細胞に酸素や栄養素が送られなくなる「虚血性脳卒中」が特に多いとされる。

   発症した場合、血流を素早く脳に戻すため血栓を溶かす薬剤を投与するのが基本的な治療法だが、発症から3時間以内に投与する必要があり、出血性の病気の患者にはそもそも投与できないなどの制限もあり、より有効な治療法確立が求められている。

   ヘレンベック博士らは以前に行った研究で、リスの体内には「SUMO」という細胞内のたんぱく質の構造を一時的に変化させる特殊なたんぱく質があり、「SUMO化」と呼ばれる細胞の機能補助を行っていることを確認した。

   このSUMO化によって冬眠中の血流低下などの悪条件化でも脳細胞機能を維持していることもわかっていたが、人や冬眠をしない動物にはSUMO化を起きにくくする「SENP2」という酵素が存在しており、脳細胞の保護機能が働かないのだ。

   ヘレンベック博士はSNEP2を阻害できれば、冬眠中のリスのように脳卒中を起こした人の脳もSUMO化によって保護できるのではないかと推測。

   コンピュータ解析と細胞実験を実施し、米国立衛生研究所(NIH)が保有する4000以上の分子コレクションを8年に渡って徹底的に調査していた。その結果、ついに8つの分子がSNEP2を阻害することができたという。

   さらに、マウスの細胞を使った検証実験では「エブセレン」と「6-チオグアニン」が特にSUMO化を促進し、酸素とグルコースが供給されていない細胞を保護することも確認されている。

マウスでは保護効果を確認

   生きている動物に投与しても効果があるのかを検証するため、人為的に脳卒中状態にしたマウスを使った実験でもエブセレンを投与したマウスの脳はSUMO化が進み、脳が保護されているのに対し、偽薬を投与したマウスの脳は細胞死が生じていた。

   6-チオグアニンには生体に有害な副作用を伴う恐れがあり、治療薬にするには不適切と考え試験していないという。

   ヘレンベック博士は「エブセレンは虚血性脳卒中による脳の損傷を防ぐ効果的な戦略につながる可能性が高い」とし、今後はエブセレン投与で細胞死を抑制するだけでなく、脳機能の回復にまで効果を発揮するか研究を行う予定だ。

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