こんにちは。J-CAST名誉編集長・山里亮太です。ネットニュースの明日を探るべく、自分が記者となり取材しネットニュースをつくるというこの企画。初回は、ネットニュースの現状を知ろうということで、ジャーナリストで法政大学社会学部メディア社会学科准教授の藤代裕之さんに話を聞いています。前の記事:【1】「文字起こしニュース」を根絶やしにしたい次の記事:【3】テレビのネットアレルギー適応しはじめたマスメディアジャーナリスト・法政大学社会学部メディア社会学科准教授、藤代裕之さん山里:実はですね。最近のJ-CASTニュースを見てると、おこがましいですが過去への反省が見えるというか(笑)。安易にテレビ・ラジオの文字起こしをニュースにしようっていうのはなくなってきたなと思うんです。藤代:これはやっぱりマスメディア側もだいぶ変わってきたというのがあって。たとえば、FMラジオ局のJ-WAVEは、放送を文字起こしのニュース仕立てにして自社で記事を配信していたりするんですよね。TBSさんだとラジオの音源もウェブサイトにアップしたり、ツイッターで拡散したりしていますよね。こうやってマスメディアがやりはじめるとソースがはっきりするので、いくらJ-CASTとかネットメディアが書いても「ここに正しいのが載っているよね」となるんです。マスメディア側も、やっとですけどネットとかスマホに適応しはじめていると思います。本当に"やっと"ですけど。こういう動きってどの業界でも起こっていて、音楽業界で起こってニュース業界で起こって、そして今は漫画業界で起こっている。山里:まず音楽業界っていうのはどんな状況なんですか?藤代:山里さん、昔どんな聞き方していましたか?山里:CDで買って聞いて、友達からはCD借りたりMDで編集したりしてもらっていましたかね。藤代:そうですよね。MDに編集したり、カセットに編集したりしたものがシェアされていた。それが徐々に不法ダウンロードと言われる、データをPCでダウンロードしてやりとりするようになった。これ違法ですよね。デジタルになると音が劣化しないから、どんどん違法ダウンロードが増えてCDが売れなくなった。でも今、大学生がどんなもので聴いているかというと、SpotifyとかアップルミュージックとかAmazonとかです。聴き放題定額制で、ラジオみたいに聞いて、その中でいいのがあったら買う、そんな感じです。違法ダウンロードした音楽じゃない。で、ニュースもそれに近づいていて、より使いやすくてより見やすくなると、正規ルートが勝つんですよ。海賊vs.正規軍のような戦いですけど。使いにくいんですよ、正規軍はとにかく。古いんです。それが音楽で起こって、違法ダウンロードが出て「売れない売れない」と騒いで、でもiTunesとか出てきたらみんな買うようになるじゃないですか。正規軍側がユーザーの利用形態にあわせたものを出してくると海賊版が干上がるんですね。今ニュースの世界はそれが起こっている。新聞社、テレビ局のアプリは使いにくい山里:じゃあ僕が言っている、(番組を)文字起こしして事件めいたワードを付けてっていうのは、縮小しつつあるってことですか?藤代:いや、縮小はしていない。どんどん参入してきて薄まってきている感じですね。でも、そうはいっても結局テレビの方がみんな見るじゃないですか。アプリの性能とかスムーズになったらそっちに流れますよ。だいたいアプリが使いにくいんですよね。新聞社とかテレビ局のは。山里:たしかに新聞社のサイトありますけど、スマートニュースの方が使いやすですもんね。どの新聞社のニュースを登録するかとか選べるし、もっといえば全紙登録できるじゃないですか。あれで好きな情報だけ取れますもんね。たしかに安いしいいよな。藤代:そう。だけど新聞社の人たちが、きちっとした情報でなおかつスムーズに見られる仕組みを作れば、そっちに流れるじゃないですか。山里:新聞の人たちって、そういうのに挑まないんですか?藤代:日経新聞くらいですね。それ以外はなかなか難しい。やっぱりスキルが違うんですよね。これまでずっと印刷してきたのにシステム作ったりプログラミングしたりと、新しいスキルが必要になる。古い組織だとなかなかカバーできなくて、難しいっていうのは、ありますよね。山里:なるほどね。先生、ちょっと気になったのはね、グノシーとかスマニューとか新しい正規軍が出てきていますけど、あそこと"悪意のある文字起こし軍団"の親和性高いじゃないですか?藤代:高いですね。山里:じゃあどんどんきますよね。これから。ラジオを聴きたくなるような告知を入れて藤代:でもね、きちんとテレビ局とかラジオ局が「自分たちの記事やコンテンツを入れてくれ」と言えばいいんですよ。山里:なるほど。僕よく言うんですけど、自分のラジオを文字起こししてとりあげるんだったら、せめてね、その文才があるんだったら、ラジオを聞きたくなるような告知をつけてくれと。そしたら飲もうと。悪く書かれても。「そんな思わずネットが燃えると分かっているのにしゃべってしまう。山ちゃんの本音が聞けるラジオは毎週水曜深夜~」(JUNK山里亮太の不毛な議論)とか書いてくれればいいのになと。これからは、TBSラジオが「最後に音源つけていいですよ」と付けられるようになっていくんですかね?藤代:うーん、まだなってないですね。でもなっていったら、確実に(悪意のある文字起こし軍団は)減っていく。山里:文字起こしの人たちが望むことって、いかに誤解させるかじゃないですか。笑顔でしゃべっているのに「悲痛な表情で」って単語をつけることで事件性をおびてしまう。でもそこに動画がついていれば、「悲痛な表情してないじゃん」「ただのエピソードトークじゃん」って分かってもらえるわけですもんね。昨日も番組で、昔のエピソードトークで相方の映画出演をつぶそうとしたっていう話をしたら、「山里のクズ行為に客席から悲鳴」ってニュースになるんですよ。藤代:ネタが炎上するお笑い芸人ってつらいものがありますね。山里:つらいですよ。一番大事な「昔ね~」っていうところの「昔ね」がばっさり切られて、今の感じにしてニュースになるんですよ。「さんま御殿」(踊る!さんま御殿!!/日本テレビ系)とかのエピソードトークが翌日ニュースになるってどうかしてるじゃないですか。藤代:だから大元のソースに戻って観てもらえればいいんだと思うし、ひどいエピソードだと思っても実際観て面白かったらファンは増えるじゃないですか。いかに戻してもらうような仕組みをつくるかですよね。Amazonのアフィリエイトとかそうで、本を紹介して本が売れるからみんなAmazonのリンク貼るんですよね。だから番組の視聴が増えるようなリンク貼ったり誘導できたりすればいいわけですもんね。山里:それ一番ウィンウィンですね。それきっかけで見た人が面白いじゃんとなったらいいし。うまくリンクできるといいですよね。藤代:今そこの流れがないので、単に消費されて「山ちゃんひでー」で終わってしまうんですよね。Photo中川容邦(続く)前の記事:【1】「文字起こしニュース」を根絶やしにしたい次の記事:【3】テレビのネットアレルギー【お知らせ】山里名誉編集長の本領発揮! するどいツッコミと豊富なボキャブラリーで思わずニヤリとするラジオ番組は、毎週水曜深夜25時~27時放送の「JUNK山里亮太の不毛な議論」(TBSラジオ)。お聞き逃しなく! 藤代裕之氏プロフィールふじしろ・ひろゆき 1973年徳島県生まれ。広島大学文学部哲学科卒業、立教大学21世紀社会デザイン研究科前期修了。徳島新聞記者を経て、NTTレゾナントでニュースデスクや新サービス立ち上げを担当。現在、法政大学社会学部メディア社会学科准教授。専門は、ジャーナリズム論、ソーシャルメディア論。近著に『ネットメディア覇権戦争 偽ニュースはなぜ生まれたか』(光文社新書)。ミドルメディアだけでなく、ニュース変化の歴史や、フェイクニュースが生まれる構造についても詳しく書かれている一冊。ネットメディア覇権戦争偽ニュースはなぜ生まれたか(光文社新書)postedwithカエレバ藤代裕之光文社2017-01-17
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