2018年 12月 17日 (月)

マラソンの好記録を支える「ペースメーカー」 タブーから「欠かせない存在」へ

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   第72回福岡国際マラソン選手権大会が2018年12月2日、福岡・平和台陸上競技場を発着点とする42.195キロのコースで開催され、服部勇馬(トヨタ自動車)が2時間7分27秒で優勝した。日本歴代8位となる好記録で、同大会の日本勢の優勝は14年ぶりとなった。

   レースが動いたのは30キロ過ぎだった。先頭集団は日本選手6人と外国選手2人の計8選手で形成され、32キロ過ぎには先頭集団は服部、ツェガエ、メセルの3人となった。36キロ過ぎに仕掛けた服部がそのまま独走の形でゴールした。

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1キロ3分を正確に刻む

   この日のレースのポイントとなったのは、先頭集団が30キロ過ぎからペースアップしたこと。なぜ30キロ過ぎからペースが変化したのか。それは30キロでペースメーカーが自身の役割を終え、レースから離れたことによって起こったものだ。

   マラソンファンならばお馴染みのペースメーカー。今大会では3人のペースメーカーが起用され、先頭集団を引っ張る形でレースを作っていった。マラソンを走る条件としては悪条件とされる気温20度を超える中、ペースメーカーは1キロ3分を刻み、そのペースを崩すことなく30キロを走り終えた。

   優勝した服部は、30キロまでの5キロごとのラップを、15:04(5キロ)、15:06(10キロ)、15:03(15キロ)、15:03(20キロ)、15:03(25キロ)、15:36(30キロ)と刻んだ。25キロから30キロまでの5キロはやや遅れたものの、ほぼ1キロ3分の正確なラップでのレース展開だった。

   30キロでペースメーカーが離れたが、服部はここから一気にペースを上げていった。35キロから40キロのラップは、1キロ3分を切る14:40を記録する驚異のラストスパートを見せた。

公表されたのは2003年

   高速化に大きく傾く近代マラソンにおいてペースメーカーの存在は、欠かせないものとなっている。海外では早くからその存在が明らかにされていたが、日本国内レースで初めてペースメーカーの存在が公表されたのは、2003年12月に行われた福岡国際マラソンだった。

   日本のマラソン界では、2003年12月以前、ペースメーカーは存在していたが、その存在はタブー視されていた。かつてのレースでは、25キロから30キロ付近まで先頭を引っ張っていた選手が、いきなりペースダウンして棄権するという光景が見られたが、これらの多くはペースメーカーだったとみられる。

   ペースメーカーは大会主催者によって招へいされる。大会ごとにペースメーカーの人数は異なるが、福岡国際レベルの大きな規模であれば通常、3人程度が起用される。ペースメーカーを起用する利点は、先頭集団の風よけとなり、レース途中まで正確なラップで集団が牽引されることで好記録を出しやすい環境を作り出す。

   大会主催者としては、レースで世界最高記録などが出れば「高速コース」として認知され、記録狙いの選手が世界中から集結する。これにより大会の価値が上がり、一般ランナーの出場希望者が大幅に増え、経営的観点で言ってもペースメーカーの存在は欠かせない。

   好記録を作り出すために陰から支える存在のペースメーカーだが、当然ならが高いレベルの走力を持ったランナーではなくては務まらない。大会ごとに契約内容は異なるが、ペースメーカーに課される距離は25キロから30キロまでがほとんど。ただ、この間、1キロ3分をメドにした正確なラップが求められる。

   ペースメーカーの報酬は大会ごとに様々ではあるが、およそ数十万円とされている。世界的に「高速コース」として知られ、優勝賞金が高額なビッグレースになれば、その報酬もグレードに沿ったものになるという。

高橋尚子さんの世界記録は男性ペースメーカーがサポート

   国際大会では、男女同時スタートの男女混合レースがあり、世界的な「高速コース」として知られるベルリンマラソンもそのひとつだ。ベルリンマラソンでは、女子選手のペースメーカーとして男子選手が付くケースもある。また、周囲の男性ランナーから女子選手の身を守ることを目的としたガードランナーを起用し、複数のランナーが女子選手を囲んで走るというケースもみられる。

   2000年シドニー五輪金メダリストの高橋尚子さんが、2001年9月にベルリンマラソンに出場した際には、男性のペースメーカーが高橋さんを牽引し、複数のガードランナーが高橋さんの脇を固めた。結果、高橋さんは2時間19分46秒の、当時の世界新記録を樹立した。

   ペースメーカーはあくまでも記録を作るために大会主催者が起用するもので、記録よりも勝負が重んじられる大会にはペースメーカーは存在しない。まして、国際オリンピック委員会(IOC)や国際陸上競技連盟が主催する五輪、世界選手権などではペースメーカーが起用されることはない。

   影の存在から公の存在となって15年。今やマラソンレースに欠かせない存在となったペースメーカーが、今後控える2020年東京五輪マラソン代表の選考レースを盛り上げる演者のひとりである。

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