2024年 4月 24日 (水)

ヤフーとの軋轢もひと段落で... アスクル株価好調の背景

   オフィス用品通販最大手、アスクルの株価が好調だ。

   2019年12月18日に一時前日終値比12.3%(370円)高の3375円まで急伸し、1年2か月ぶりの高値をつけた。前日取引終了後に発表の2019年11月中間連結決算で課題の個人向け部門「LOHACO(ロハコ)」の業績が改善したことが確認され、投資家の間で成長への期待感が高まった。その後も12月23日に高値を更新するなど勢いがついている。

  • 株価が好調なアスクル。決算発表に好感が(イメージ)
    株価が好調なアスクル。決算発表に好感が(イメージ)
  • 株価が好調なアスクル。決算発表に好感が(イメージ)

苦戦していた個人向け事業にも光明

   まずは中間決算の内容を確認しておこう。売上高は前年同期比4.3%増の1996億円、営業利益は3.4倍の34億円、純利益は7倍の21億円と大幅な増益を果たした。このうち、アスクル全体の売上高の約8割を占める法人向け通販は、売上高が前年同期比5.4%増の1640億円、営業利益が8.5%増の68億円と好調だった。

   アスクルで購入経験のない顧客が商品を検索した際にアスクルのサイトが上位に掲載される施策を講じた効果などで、新規顧客の利用が増加。また、従来からの顧客向けの、名前がわからない商品でも検索できる画像検索機能やAI(人工知能)による検索機能の進化により、購入点数や単価が増えた。さらに、8月に始めた介護施設向けに大人用おむつなど主要5品目を定期的に届けるサービスがヒット。消費税増税前の駆け込み需要によるコピー用紙など消耗品の販売増も寄与した。

   課題の個人向け事業は赤字が続いているが、赤字額は縮小した。2019年11月中間期のロハコを含む個人向け事業全体の営業赤字は35億円で、前年同期(50億円)より改善。基本配送料が無料となる注文金額を引き上げたことで配送を効率化するとともに「ついで買い」も呼び込んだ。また、利益率の低い飲料の送料を改定して採算を改善した。メーカーとともに企画した原料や製法にこだわったパン「LOHACO BREAD」を9月に発売するなど付加価値向上にも努めた。ただ、損益を改善し赤字脱却を目指す対策を優先させていることから、ロハコを含む個人向け事業全体の売上高は前年同期比3.0%減の316億円と減収だった。このうちロハコの売上高は6.7%減の240億円。

騒動後は「任せる」姿勢貫き好感

   さらに市場に好感されたのは、12月17日の中間決算説明会で、個人向け事業を2023年5月期までに黒字化すると表明したこと。そのためにプライベートブランド(PB)の比率を引き上げて採算を改善させるほか、親会社である持ち株会社Zホールディングス傘下の事業会社ヤフーが新たに開発した「PayPayモール」に出店し顧客を開拓するという。野村証券は中間決算発表後に出したリポートで「黒字化の目標期限を設定した点は評価される」と書いた。

   ロハコと言えば今夏、親会社のZホールディングス(旧ヤフー)がアスクルに事業譲渡を求め、事業譲渡どころか資本業務提携の解消を主張するアスクルと対立し、当時のアスクル社長が事実上解任されたことが記憶に新しい。「親子上場の弊害」などと批判的に報じられたが、ひとまずアスクルに新社長として吉岡晃氏が就任して以降は「ロハコはアスクルに任せる」方針をZホールディングスが貫いていることも投資家を安心させている。

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