韓国の最大野党で革新系の「共に民主党」の李在明（イ・ジェミョン）前代表（60）が新しい大統領に就任し、過去の「反日発言」が改めてクローズアップされている。当選が有望視された選挙戦では、李氏は、「日本と仲良くしたい」と発言し、政権に着けば現実路線を取るのではないか、とも見られている。李氏とは、どんな人物で、発言の真意はどこにあるのだろうか。「日本に敵対的だろうという先入観があるが、誤解だ」保守系政党「国民の力」の尹錫悦前大統領が罷免される国政の混乱で、韓国内は、社会の亀裂が深刻になったと言われている。このことを意識してか、李在明氏は2025年6月3日に投開票が行われた大統領選に勝利すると、「軍事クーデターを二度と起こさせない」としながらも、「分裂の政治を終わらせる」と就任式で宣誓した。共に民主党は、国会の過半数を占め、政権は盤石だともされている。その一方で、自らの当選は、保守分裂に救われた面もあるため、国内の融和ムードを演出したかったとの見方もある。当選を意識してか、選挙期間中は、異例とも言える日本への「ラブコール」も目立った。報道によると、戒厳令騒動後の24年12月26日に日本の駐韓大使と面会した際には、「日本に対する愛着が非常に深い」と発言した。そして、選挙戦最中の25年5月20日のユーチューブ配信では、「日本に敵対的だろうという先入観があるが、誤解だ」と説明し、「私は本当に日本と仲良くしたいのです」「日本国民に対して大変好感を持っています」とも語った。自らのフェイスブックで同月26日に投稿した選挙公約では、「日本は重要な協力パートナーです」「社会・文化・経済の分野は、前向きな未来志向で対応していきます」と宣言した。選挙戦などでは、対日融和発言を繰り返しているが、李氏と言えば、「対日強硬派」としてのイメージの方が強いことで知られてきた。「歴史問題や独島の問題には、強く対応するしかない」ソウル近郊の城南市長だった16年11月23日、李氏は、日韓で軍事情報包括保護協定が結ばれたことについて、「依然として日本は敵性国家であり、日本が軍事大国化する場合、最初に攻撃対象になるのが朝鮮半島であることは自明だ」などとフェイスブック投稿で異論を唱えた。島根県が「竹島の日」記念式典を行った22年2月22日には、大統領選候補となった李氏は、「日本の独島（竹島の韓国名）領有権の主張は、歴史歪曲に基づく挑発だ」などと投稿で厳しく批判している。23年8月26日には、共に民主党代表の立場で東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出にも反対して、「日本が越えてはならない一線を越えた。核汚染水の放流は、太平洋沿岸国に対する戦争の宣言だ」などと発言し、ハンガーストライキも実行した。もっとも、大統領選最中などでも、李氏は、日本への厳しい指摘は続けている。選挙公約では、慰安婦問題にも触れ、「被害者の尊厳を守る」として記録物のユネスコ「世界の記憶」への登録を進めると明言した。5月20日のユーチューブ配信でも、「歴史問題や独島の問題には、私たちが強く対応するしかない」とも述べていた。李氏は、幼少時代は家庭環境に恵まれず、貧困にあえぎながら苦学して弁護士になった経歴を持っている。それだけに、政権に着いても、ひとたび苦境に陥れば、現実的な解決を目指すともみられている。歴代の韓国政権のように、支持率が落ちてきた場合、反日世論に訴えることによって、状況を変えようとすることも十分に考えられる。日本の石破茂首相は、李新大統領に対し、「日韓交流のさらなる活発化をやっていきたい」とメッセージを送ったが、状況によっては難しい対応を迫られそうだ。（J-CASTニュース編集部 野口博之）
記事に戻る