「ここは日本ですよね」16歳少女に起きた18日間の逮捕・勾留そして死...サンテレビ特集 遺族は違法性訴え

   兵庫県の独立放送局「サンテレビ」の報道・情報番組「NEWS×情報 キャッチ+」は2026年7月14日、障害者福祉施設で働いていた「るな」さん(当時16歳、仮名)が兵庫県警に暴行容疑で逮捕・勾留され、釈放後に摂食障害などを発症して亡くなった経緯を約15分にわたって特集した。

   遺族は「違法な捜査や身体拘束が死に追いやった」として国と兵庫県を相手取り国家賠償を求める訴訟を起こしている。

  • 兵庫県警本部
    兵庫県警本部
  • 大川原化工機、冤罪事件で国賠訴訟 国と都に賠償命令(写真:つのだよしお/アフロ)
    大川原化工機、冤罪事件で国賠訴訟 国と都に賠償命令(写真:つのだよしお/アフロ)
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利用者1人の証言で逮捕...「ずさんな捜査による不当逮捕」

   特集では、るなさんが2025年2月、勤務先の障害者福祉施設で、他の利用者にかみつこうとした重度の知的障害がある利用者を止めに入った際、「顎付近を複数回、手のひらで押さえつけた」などとして、25年6月に暴行容疑で逮捕・勾留された経緯を紹介した。

   その後、るなさんは不起訴処分となったが、自白を強く迫る警察の取調べで精神的に追い込まれ、急性ストレス障害(ASD)や心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症し、摂食障害などに陥ったと報じた。釈放後も症状は改善することなく、25年12月、低栄養状態により16歳で亡くなったという。

   番組では、るなさんの母親と姉が取材に応じ、

「私は逮捕され、警察に謝ってもらえていないことで、家族が犯罪者のきょうだいって思われるんかなと言って、泣き叫んだこともあった。1人の命が亡くなって。ましてや大人が子どもをこんな形で。国民を守る立場の人がここまでした」(母親)
「何回も警察署の人に謝ってほしいと言っても『もうその件は終わったんで』って。私は母と一緒に真実が知りたいのと、るなに謝ってほしい」(姉)

などと訴えた。

   また、るなさんの弁護人を務めた向井義博弁護士は、現場にいた32人への聞き取りを行わず、知的障害のある利用者1人の証言をもとに逮捕に至ったことは「ずさんな捜査による不当逮捕だ」と主張。向井弁護士は「他の関係者への聞き取りや障害福祉の現場の実情をきちんと確認していれば、逮捕は必要なかった」と指摘。4か月前の暴行容疑で、しかも16歳の少女を逮捕・勾留し、勾留延長までしたことは、少年法の趣旨からも問題があると批判した。

   さらに、特集では、警察に証言をした利用者が遺族に対して、

「あごをおさえてたと言ってしまったがじっさいはあごに手をそえていた。オーバーに言ってしまった」
「自分が言ったことのふりかえりをすると、ぎゃくたいではないと思った。オーバーに言ってしまってすみませんでした」

と書かれた手紙が送られてきたことも紹介した。

被疑者ノートに書かれた「ママに会いたい」

   番組では、るなさんが留置中に記した「被疑者ノート」も紹介された。

   ノートには、「本当はやったんだろう。正直に言え」「心わって話せ」「少年(院)に行きたいんか?」などと取調官から言われたとする内容や、「今言ったら楽になるぞ。〇〇は言ったぞ」とるなさんと一緒に逮捕された男性スタッフが「自供した」と嘘の説明を受けたという記述があったという。

   また、「何もしていないのに。自由をかえしてほしいです」「ママあいたい。不安でいっぱい」「本当に10日間だけがいいです。なにもしてないのにショックで食べれない」などの記述も紹介された。

   番組によると、るなさんは逮捕から17日目に留置場で倒れ、救急搬送されたものの、ストレス性胃腸炎と診断された後、再び留置場に戻されたという。釈放翌日に測定した体重は27.7キロで、18日間の身体拘束で約10キロ減少していたと報じた。

「大川原化工機事件に匹敵する」との弁護士の見解も

   遺族は、2026年6月17日、違法な捜査や身体拘束が原因で死亡したとして、国と兵庫県を相手取り約1億1000万円の損害賠償を求めて神戸地裁に提訴した。

   元検事の郷原信郎弁護士はサンテレビの取材に「これは許しがたい人質司法の事案だと思う」とし、

「まず嫌疑があると判断したこと自体に問題があるし、16歳の少女を勾留したという判断、勾留請求をしたという判断にも重大な問題がある。こういったことがなければこの少女が命を落とすことはなかったわけで、大川原化工機事件に匹敵する検察の対応、それを容認した裁判所の対応は非難されるべきだと思う」

と述べた。

   一方、兵庫県警は「個別の事件のコメントについては差し控えさせていただきます」、神戸地検も「個別事件の捜査の具体的内容に関わる事柄であり、訴状の送達も受けていないため、コメント取材をお受けすることは差し控える」と回答した。

「ここは日本ですよね、令和の時代ですよね」

   取材した藤岡勇貴キャスターは、

「ここは日本ですよね。そして令和の時代ですよね。こんなことが起きたということを非常に深刻に受け止めなければいけないという風に私は感じました」

とショックを受けた様子を見せた。

   神戸新聞特別編集委員の加藤正文さんは「本当に法治国家としてこんな事案が起きていいのかと思う」と述べ、警察、検察に対して「裁判の結果が出てからじゃなくて、どんな捜査、どんな取調べをしたか、もう本当にきちんと公開すべき」と訴えた。また、勾留延長を認めた判断については「人権を侵害していると本当に感じた」と話した。

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