自民党、民主党の事務局幹部として国会の生きざまを50年余り見てきた政治アナリストの目には、高市政権の国会運営は「国会損壊罪にあたる」と嘆くほどのひどさに映ったようだ。2026年7月21日放送のBS11「報道インサイドOUT」では、「高市政治の通信簿」として政治評論家らが採点したが、評価は厳しかった。
「皇室典範改正は立法府の総意とかけ離れている」
政治アナリストの伊藤惇夫さん(77)は自民党事務局で小選挙区比例代表制など政治改革大綱をまとめた経験があり、その後離党した故羽田孜・元首相らと行動をともにして、新進党、太陽党、民政党、民主党の事務局長などを務めた人である。
「インサイドOUT」では、皇室典範改正について伊藤氏は、「『立法府の総意』とはかなりかけ離れた内容になった。憲法第1条にうたわれる『日本国民の総意』に基く内容かと言えば、今の世論の動向を見れば明らかに集約されているとは思えない」と批判した。
国旗損壊罪法なども含めて審議した今国会の動向について、「国会の在り方が非常に歪んでしまった」「こんなにひどい国会運営は記憶にない」とこき下ろした。
「説明力、根回し力」が最低、国民に対して説明していない
伊藤氏の「高市通信簿」は、「説明力」と「根回し力」はいずれも5段階で最低の1。「総選挙での圧勝と高い内閣支持率で、今の自民党では、官邸からの指示があったら従わざるをえない。だから、高市さんからすれば、根回しは必要ない、指示を出すだけ。国会にもほとんど出てこなかった。国会に対して、国民に対して、なぜこの法律、政策が必要なのか、高市さんが説明したという記憶はほとんどない」と語った。
同席した政治ジャーナリスト(NHK元記者)の城本勝氏は、「ゼロとかマイナスをつけたいくらい。根回しという言葉を高市さんは知らないのでは」とさらに厳しい。
選挙ドットコム調査「内閣支持率、若い世代のネットの高市評価に変化」
高市内閣の支持率が最低になった原因について、選挙ドットコム編集長の鈴木邦和氏が分析した。同調査(7月11、12日)によると、内閣支持は50.4%(前回比マイナス5.6%)、不支持は34.9%(前回比6.1%増)だった。いずれも「若い世代」の動向が影響していると鈴木編集長は分析する。
中傷動画や皇室典範問題にはあまり関心がなく、物価高対策での高市内閣への期待感が、じりじりと剥がれ落ちている」と言う。
一方で、伊藤、城本両氏が最低の1評価だった「説明力」について、鈴木編集長は「4」と高評価をする。
「高市さんは、国会やマスメディアへの説明力は足りていないが、ネット上の説明力は高い。ネット上の説明を重視するのはトランプ米国大統領をはじめ、世界のリーダーのトレンドであり、ネットで直接働きかけられるリーダーでないと、この先、なかなかやっていけない」と断言するのだ。
「ネットでの高市支持が落ち始めている」
ただし、この「ネット空間での評価」が大きく落ち始めているという。YouTube上に流れている動画を分析した選挙ドットコムの調査によると、高市自民党が大勝した2026年1月27日から2月9日までの調査では、高市首相を評価する「ポジティブ動画」が1億3496万2121本で「ネガティブ動画」280万4211に対して約50倍だった。これが半年後の7月6日から12日まででは「ポジティブ」が769万6243本と激減、「ネガティブ」818万7162本と逆転した。
高市首相は、中傷動画関連の「秘書の陳述書」を22日に提出した。「もう追及される時間もないと踏んだのか」(伊藤氏)との観測もあるが、朝日新聞によると、自民党幹部は「(陳述書の)中身がなければ参考人招致を要求されるし、中身があれば『直接聞かねば』となる。悪手だ」と突き放したという。
どうやら、自民党内には相談する相手もいないらしい。
(ジャーナリスト 菅沼栄一郎)