熊本地震は保育の現場にも大きな打撃を与え、苦闘が今も続いている。震源地近くの熊本市に住み、災害時の子どもと保育について研究している熊本学園大学教授吉津晶子さんは震災後、被災地域で働く保育者から現場の状況を聞き取ったが、「保育者も被災地域で暮らす被災者」で、「被災者が被災者をケアする」という厳しい現実がそこにあったという。この問題をどう解決すべきなのか。
給食の中止、弁当持参で対応の園もあった
吉津さんは聞き取りから次のケースを報告している。
・断水のため保育時間を短縮している園がある。
・給食を中止し、弁当や水筒持参で対応している園がある。
・通常の場所で保育できず、別の場所で少人数を受け入れているケースもある。
・通常保育再開後も避難への備えを続けている。
帰宅した母親に、おびえた子どもが泣いて抱きついた
ある保育教諭の場合だ。園児の安全確保と災害対応に当たり、地震発生後に全ての園児を無事に送り出して自宅へ帰る。途中にスーパーに寄るが、水やパン、カップ麺など、必要なものが並ぶ棚はほとんど空の状態。
自宅には小学生の息子が留守番をしていた。ダイニングテーブルの下に避難、揺れが収まってからも、大きく長い揺れの恐怖から、その場所から出ることが出来なかったそうだ。一時帰宅した母に泣きながら抱きついたという。どれほど心細く、怖かっただろう。
園には守らなければならない子どもの命がある。自宅にも自分を必要としている子どもがいる。自分の子どものそばにいたい母親の気持ちと、保育教諭として園児を守らなければならない責任。両方の間で葛藤を抱えていた。
保育に関して、外部からの災害派遣チームが出来ないか
吉津さんは、「保育者もその地域で暮らす一人の被災者」だという深刻な現実があるという。災害時に保育を継続することは、子どもの生活を守るだけでなく、地域の復旧・復興という面からも重要な意味を持つと指摘する。
災害時の保育は「休園」か「通常保育」下の2つの状態だけでとらえることが出来ない。
勤務先の園が通常保育に戻っても、保育者自身の家庭が通常の生活に戻っているとは限らない。施設の復旧と、そこで働く人の生活復旧が、必ずしも同時には進まない。
吉津さんはこれまでの熊本地震や豪雨災害の調査研究を通して、被災地外から保育者を支える仕組みの必要性を指摘してきた。それが、「DMAT(災害派遣医療チーム)のような仕組みが必要ではないかとの提案だ。被災地外から保育者や保育支援の専門職がチームを作って入り、地域の保育者と子どもたちを支える。保育者が自宅の片づけをしたり、自分の子どもや家族の元へ戻ったりする時間を確保できるようにする。
(リサーチ班)