豊かな自然に恵まれた田舎の観光地。旅行者にとっては魅力的な観光地でも、そこで暮らす人にとっては日常生活の場でもある。観光シーズンの混雑によって、普段の買い物や外出にも影響を受けることがあるようだ。2024年にとある観光地に移住した藤森麻衣子さん(仮名・30代)も、移住して初めて「観光地で暮らす」ことの大変さを実感したという。ただ買い物に行くだけなのに、こんなに時間がかかるのか藤森さんは、自然豊かな環境に魅力を感じながら、新しい生活をスタートさせた。移住先が観光地であることは知っていたものの、観光客の多さが自分たちの日常生活にまで影響するとは考えていなかったという。最初に驚いたのは、移住して間もなく迎えたゴールデンウィークだった。「普段利用しているスーパーへ行く道が、観光地へ向かうルートと重なっているんです。いつもなら10分で着くのに、連休になると20~30分かかることもありました」スーパーへ到着しても、駐車場が混雑していた。県外ナンバーの車が多く、普段とは明らかに様子が違っていた。移住したばかりの藤森さんは、そうした事情を知らずに、休日は子どもを連れていつものように買い物へ出かけた。ところが、予想以上の渋滞に巻き込まれ、帰宅時間が大幅に遅れてしまったそうだ。「子どもが車の中でぐずり始めてしまって、食事や昼寝の時間までズレてしまいました。『ただスーパーに買い物に行くだけなのに、こんなに時間がかかるのか』と驚いたのを覚えています」それ以来、連休や観光シーズンには、できるだけ車で外出しなくても済むように予定を立てるようになった。「ちょっとお茶して話したいだけなのに」影響を感じたのは、日々の買い物だけではなかった。ある日、地元の友人が遊びに来たため、一緒にカフェへ行こうとしたそうだ。「せっかくなので、以前から行ってみたかったカフェに行こうと思ったんです。でも、行ってみたら混雑していました」別の店へ移動しようにも、道路が渋滞している。「ちょっとお茶して話したいだけなのに、それが簡単にできません。観光シーズンは、普段なら何でもないことまで予定どおりにいかなくなるんだと感じました」以前から気になっていた飲食店でも、観光シーズンによる違いを実感したことがある。藤森さんが2月に訪れた際には待ち時間もなく、店内でゆっくり食事を楽しむことができた。しかし、店員から「シーズンになると数時間待ちになることもある」と聞き、驚いたという。「観光シーズンとそれ以外ではまったく様子が違うんですよね」現在では、連休が近づくと必要な買い物を事前に済ませるなど、混雑を見越して行動することが当たり前になった。「自分が移住して初めて、観光地の賑わいと、そこで暮らす人の日常は表裏一体なのだと思いました」観光客が訪れることは地域の活性化につながる一方で、特定の期間や場所に人や車が集中すれば、住民の移動や日常生活にも影響が及ぶ。観光地を訪れる側も、そこが誰かの生活の場であることを意識しておきたい。
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