「令和の米騒動」で異常な高値が続いたコメが、急激な値下がりに見舞われている。農林水産省によると、2026年8月24~30日に全国約1000店のスーパーで販売されたコメ5キロの平均価格は3112円。3週連続の値下がりとなった。テレビ朝日の26年9月4日付の報道によると、横浜市のスーパーでは、千葉県産「ふさおとめ」の2025年産が3014円なのに対し、2026年産の新米は2474円で販売予定と、同じ産地・銘柄でも新米の方が500円以上も安い逆転現象が起きている。背景にあるのが「コメ余り」だ。26年6月末の民間在庫は過去最大の243万トン。さらに農水省は、26年産主食用米の生産量を735万~754万トン、2027年6月末の在庫を246万~283万トンと見込む。取引関係者が適正とみる180万~200万トンを大幅に上回る水準だ。市場から21万トンを吸収、米価下落の歯止めになるかそんな中、鈴木憲和農水相は9月1日、昨年放出した政府備蓄米のうち、まず2025年産21万トンを買い戻す方針を発表した。政府は、食料安全保障のため備蓄を100万トン程度まで回復させることが目的だとしている。だが、買い戻せば相場にも作用する。政府が市場にあるコメを買い戻せば、その分だけ民間の在庫が減る。現在のように前年産米が余り、新米も出回る時期に21万トンを備蓄米として吸収すれば、値下がりに歯止めがかかりやすくなる。JA側からは早くから買い戻しを求める声が上がっていた。JA全中は25年11月、政府に対し、備蓄米の買い戻し・買い入れ方針を早期に示すよう要請。その後も、適正な備蓄水準に戻すための計画的な買い戻しを求めてきた。高騰時には放出に慎重、政府自身が「遅れ」を反省消費者にとってすっきりしないのが、高騰時との対応の違いだ。24年8月、コメの品薄が深刻化し、大阪府が備蓄米放出を求めた際、当時の坂本哲志農水相は「コメの需給や価格に影響を与える恐れがある」と慎重な姿勢を示した。政府が放出を決めたのは約半年後の25年2月だった。政府は後に、この対応を自ら検証。備蓄米の放出が遅れ、卸売業者などの不安を払拭できず、「更なる価格高騰を招いた」と認めている。つまり、高騰時の後手は政府自身が失策だったと総括している。ここにきてようやく2000円台でもコメが買えるようになり、消費者からは「ありがたい」「やっとコメをたくさん食べられる」と歓迎する声が相次いでいる。その矢先の買い戻しだけに、ネット上では「高騰時は長期間ほったらかしだったのに」「安くなったときだけ動きが早い」といった不満も出ている。農家も高騰から急落まで相場に振り回される一方、農家もコメ相場の急変に苦しんでいる。昨年は集荷業者から「あるだけ欲しい」と言われた農家が、今年は買い渋りに直面するほど状況が一変した。高値が続けば消費者が買えず、暴落すれば農家が作り続けられなくなる。相場が乱高下するなか、政府の対応が二転三転し、消費者と農家が振り回されているようにも見える。そんな中、農水省は9月2日、国産主食用米の需要動向に関する新たな分析を発表し、「コメ消費全体の減少傾向は見いだし難い」との見解を示した。流通現場などでは、価格高騰による「消費者の米食離れ」が起きたことも、現在のコメ余りに影響したとの指摘があり、農水省がこれを否定するかのような分析結果を出すのは異例だ。農水省の分析によると、国産と外国産を合わせた1人当たりのコメ消費量が23年度の50.3キロから、25年度には52.0キロへ増えたという。内訳では、国産米が49.4キロから49.2キロへ減った一方、外国産米は0.9キロから2.9キロへ3倍以上に増えた。ただし、これを見ると、高騰が国産米の需要に何も影響しなかったとは考えにくい。また、24年度のコメ消費量53.3キロと比べると25年度は1.3キロの減少が見られる。「消費者や農家よりもJAを優先しているのではないか」2025年に備蓄米を放出した際は、第1回入札ではJA全農が落札量の約94%を占め、第2回も約94%を落札している。放出時に大量の備蓄米を引き受けたJA側が、その後は早期の買い戻しを政府に求め、実際に21万トンの買い戻し方針が示された。こうした経緯から、「政府は消費者や農家よりもJAを優先しているのではないか」との見方も出ている。高市政権は、コメ全体の生産量を2023年の791万トンから2030年に818万トンへ増やし、輸出用や米粉用などの需要も拡大する方針を掲げている。だが、価格が乱高下し、消費者と農家が振り回される状況が続けば、増産や輸出拡大を掲げてもコメ作りは安定しない。高騰時には消費者の声を無視するかのように後手に回り、下落局面ではJA側の要望に応えるかのように買い戻す。政府のコメ政策は、誰を守ろうとしているのだろうか。
記事に戻る