高市首相を習近平主席がAPECで無視? 「台湾有事」発言からもうすぐ1年、トランプ大統領が中国にすり寄る

   中国・深圳で2026年11月18〜19日に開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議まで1か月半に迫るなか、米中首脳の急速な接近が話題を呼んでいる。

  • 2026年3月に高市首相がアメリカを訪問して行われた日米首脳会談(写真:ロイター/アフロ)
    2026年3月に高市首相がアメリカを訪問して行われた日米首脳会談(写真:ロイター/アフロ)
  • 高市首相が「雄たけび」?(ホワイトハウスの公式ウェブサイトより)
    高市首相が「雄たけび」?(ホワイトハウスの公式ウェブサイトより)
  • 2026年3月に高市首相がアメリカを訪問して行われた日米首脳会談(写真:ロイター/アフロ)
  • 高市首相が「雄たけび」?(ホワイトハウスの公式ウェブサイトより)

トランプが中国を「同盟国」と呼んだ

   2026年9月24日、中国の習近平国家主席は国賓として米ホワイトハウスを訪問し、トランプ大統領から手厚い歓迎を受けた。

   歓迎の場でトランプ大統領は、中国を「第2次世界大戦時の同盟国」と表現した。これに対し習主席も「両国国民は肩を並べて戦い、日本軍国主義者たちに立ち向かった」と応じ、歴史的な結びつきを演出してみせた。

   会談では、11月10日に期限を迎える貿易休戦の2027年1月10日までの延長、中国による米国産大豆2500万トンの購入、米国へのジャイアントパンダ貸与などが合意された。

   さらに新華社によると、習主席は「台湾独立に反対する正しい立場を堅持する」よう米側に求めたという。

   この2日前の22日には、高市早苗首相がニューヨークでトランプ氏と会談している。

   ただし時間は約35分。政府は「日米同盟の強固さを世界に示せた」と強調したものの、米中首脳会談とは大きな差があったと言わざるを得ない。

   日中関係は、2025年11月7日の衆院予算委員会で高市首相が台湾有事を念頭に「存立危機事態になりうる」と答弁して以来、冷え切ったままだ。改善に向かう兆しは見えない。

   まず中国側は2025年11月、日本への渡航自粛を呼びかけるとともに、日本産水産物の輸入を再び停止した。

   さらに2026年1月6日には、軍民両用(デュアルユース)品目の対日輸出規制を公表した。対象にはレアアース(希土類)やガリウム、ゲルマニウムなども含まれるとみられる。

   日本はハイブリッド車や電子部品に欠かせないレアアースの輸入の7?9割を中国に頼っており、その中での措置だった。

   また、日本政府観光局(JNTO)の推計値によると、2026年8月の訪日中国人客数は41.8万人にとどまり、前年同月比59%減となった。訪日外国人客全体も同9.6%減と落ち込み、インバウンド消費にも影を落としている。

高市首相が発言を撤回できない理由

   こうしたなか、日本国際貿易促進協会の会長として北京を訪れた岩屋毅前外相は、2026年9月28日に王毅外相、29日に何立峰副首相と相次いで会談した。

   高市首相の答弁で関係が悪化して以降、中国指導部の高官が日本の国会議員と会談したのはこれが初めてとされる。

   会談で中国側は、経済交流の重要性に理解を示しつつも、「日本の指導者の台湾に関する誤った言動」を速やかに是正するよう強く求めた。

   中国側が知中派の前外相を窓口に選び、高市首相の発言をめぐって改めて圧力をかけたということになるだろう。

   ただし、高市首相は自らの発言を撤回していない。

   考えられる理由の一つは、一度掲げた「存立危機事態」の認識を撤回すれば、日米が一体となって台湾海峡の平和を維持し、中国による現状変更を抑止するという枠組みを、日本側から崩すことになるという点だ。

   さらに、台湾や周辺国に「圧力に屈した」という誤ったシグナルを送ることにもなりかねない。

   また、保守派を中心とする支持層の信任を背景に発足した政権にとって、中国の反発を受けて前言を取り消すことは、政権の基盤を揺るがすことになりかねない。

   高市首相は、先の衆院選でも、毅然とした対中姿勢を自らの正当性の中核に据えてきた。

   しかし皮肉なことに、その「逃げられない理由」の当事者であるはずのトランプ政権が、国益と取引を優先して中国との休戦を成立させてしまったのである。

   ここから仮に首相が妥協姿勢を見せて発言を修正したとしても、中国が規制や渡航自粛を即座に解除する保証はない。ノーベル平和賞をめぐって中国からサーモンの事実上の輸入制限を受けたノルウェーは、関係修復に約6年を要し、その間に市場シェアを失った。

   引けば外交的威信と安全保障の論理を失い、突っ張れば経済的に消耗する――まさに袋小路に陥っているのだ。

日中間には意思疎通のパイプが欠落している

   中国との関係改善の糸口が見いだせないまま、11月のAPEC首脳会議が近づいている。

   2026年9月30日放送の『グッド!モーニング』(テレビ朝日系)では、同局の千々岩森生官邸キャップが、

「APECの場で、習主席が高市首相とだけ首脳会談を行わない可能性がある」

との見方を示した。

   また、9月25日放送の『報道ライブ インサイドOUT』(BS11)では、東京大学大学院の川島真教授が、

「日米中の関係を三角形で見ると、米中の対話は盛んになっていく、日米は同盟関係がありますが、日中は空っぽなわけです」

と述べている。

   つまり、米中が激しく対立しながらも対話のチャンネルを維持しているのに対し、日中間には意思疎通のパイプそのものが欠けている状況にあるということだ。

   高市首相は、自らの発言をきっかけに陥った苦境を、どう乗り越えようとしているのだろうか。

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