「経世済民」を唱えて消費減税に向かう高市首相...「経世会」を率いて消費税導入した竹下元首相に失礼の声

   高市早苗首相は2026年10月5日の所信表明演説で、初めて消費税の減税に踏み切る決意を「経世済民」との言葉に託して表明した。この「経世済民」という言葉を聞いて、年配の政治家に「おやっ」と思う人たちがいる。37年前に故・竹下登首相(当時)は決意をもって消費税の導入を決断した。その竹下氏が率いた「経世会」の名称は、この「経世済民」から来ている。

  • 高市早苗首相(2026年2月撮影)
    高市早苗首相(2026年2月撮影)
  • 高市早苗首相(2026年1月撮影)
    高市早苗首相(2026年1月撮影)
  • 高市早苗首相(2026年2月撮影)
  • 高市早苗首相(2026年1月撮影)

後藤謙次氏「この場で使う言葉ですか?竹下さんに失礼」

   高市首相は5日の演説で、「私が貫く志は『経世済民』です。『世を経(おさ)め、民を済(すく)う』」と主張した。全部で3度も、「経世済民」を主張した。

   1989年に消費税を導入した竹下政権を長期取材した後藤謙次・共同通信元編集局長(77)は、「非常にある面で、不快な念と言うのもおかしいんですが、ここの場で使うんですかと」話した(CS・TBSテレビ10月9日放送)。

   大平正芳政権の「一般消費税」と中曽根康弘政権の「売上税」という二代にわたる試みは、世論の猛反発の前に潰えた。これを受けた竹下政権が、自民党内最大派閥「経世会」の政治力を背景として消費税創設を果たした。

   その後3%→5%→8%→10%との税率引き上げの過程で、何代もの内閣がつぶれた。「それが完成に至らない途上に、その体系を大きく崩してしまう。減税のためにこの言葉を使うんですか。竹下さんに対して、失礼な発言ではないか」と後藤氏は言う。

   「消費税の背景を、何も知らない愚行だ」などと当時の経世会関係者からは、ため息がもれる。

   経世会は、小沢一郎氏らが93年6月に自民党を脱党したため分裂、その後平成研究会(小渕派)と改名したが、過去の勢いはなくなった。経世会の分裂騒動の1993年の総選挙で、高市首相は初当選。「経世会分裂騒ぎ」を目の当たりにしていた。

竹下氏は「自分で汗をかく」ことを選んだ

   「2年限定の食料品消費減税」が最大の焦点となる臨時国会では、減税が物価引下げにどれだけ効果があるか、法案の本格審議が始まる前に自民党内からも疑問が相次ぐ。法案が成立したとしても「2年後に1→8%への再引き上げ」ができるのか? 高市首相は、「私が責任を持ち、確実に税率を戻す」と明言するが、政権基盤の弱い高市政権が2年後まで続く、との見方は少数派だ。

   首相を辞めた後の竹下氏を世田谷の私邸に訪ね、何度も話を聞いた。「ハイライト」の煙をくゆらせながら、「汗は自分でかきましょう、手柄はひとにあげましょう。だわな」と言うのが竹下氏の口ぐせだった。幹事長、官房長官の時も、国会の根回しを自分でやっていた。2年後の「増税」の局面で、高市首相は「自分で汗をかく」ことができるのか。

(ジャーナリスト 菅沼栄一郎)

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