ヨーカドーの次はイオン...営業利益は過去最高もスーパー事業は赤字 傘下760店の3割が苦境、約100店閉鎖へ

   スーパー業界の「絶対王者」だったイオンに異変が起きている。2026年10月13日に発表された中間決算で、グループ全体の営業利益は過去最高を記録した一方、主力の総合スーパー事業とスーパーマーケット事業はいずれも赤字となった。

   さらに、マルエツやいなげやなどを展開する傘下企業のユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(U.S.M.H)は、2030年度までに不採算店舗を約100店閉鎖する計画を発表。かつてスーパー業界をけん引したイトーヨーカドーが大量閉店に追い込まれ、その後はイオンの「1強時代」が到来したはずだったが、盤石に見えた巨大グループに何が起きているのか。

  • U.S.M.Hのグループ企業のひとつ、マルエツ(写真:アフロ)
    U.S.M.Hのグループ企業のひとつ、マルエツ(写真:アフロ)
  • イオングループの都市型小型スーパー「まいばすけっと」
    イオングループの都市型小型スーパー「まいばすけっと」
  • U.S.M.Hのグループ企業のひとつ、マルエツ(写真:アフロ)
  • イオングループの都市型小型スーパー「まいばすけっと」

「想定以上にインフレが厳しく」と説明

   イオンの2026年3~8月期の連結決算は、営業収益が前年同期比13.8%増の約5兆9041億円、営業利益が同10.7%増の約1307億円となり、いずれも中間期として過去最高を更新した。しかし、好業績を支えたのはドラッグストアなどの事業だ。総合スーパー事業は増収ながら約126億円の営業赤字となり、食品スーパー事業も約1億7600万円の赤字だった。

   特に厳しいのが、首都圏でマルエツ、カスミ、いなげやなどを展開するU.S.M.Hだ。今年3月にはマックスバリュ関東やダイエーの関東事業などを統合した「イオンフードスタイル」も発足し、グループの店舗数は9月28日時点で計760店に上る。

   ところが、3~8月期の営業収益は前年同期比14.0%増の約5448億円となったものの、営業損益は約33億円の赤字だった。増収には事業統合による売上の上積みも含まれている。

   U.S.M.Hの井出武美社長は決算説明会で、「想定以上にインフレが厳しく」と説明。特に生鮮食品や総菜に使うトレーなどの資材、原材料の値上がりが想定を上回ったという。さらに客数や買い上げ点数も計画に届かず、価格競争に対抗するための販促費などが収益を圧迫した。

   同社によると、約3割の店舗が厳しい経営状況にあり、老朽化した店舗などを中心に約100店を閉鎖する方針。一方、2030年度までに約50店の新規出店も見込み、店舗網の再編を進める。

ロピア、トライアルが躍進 「普通のスーパー」が選ばれなくなる?

   スーパー業界では、イトーヨーカドーが不採算店の大量閉鎖を進め、2025年には米投資ファンド傘下に入った。積極的な買収によって巨大化したイオンは、業界の「1強」と呼ばれる存在になっていた。

   しかし、その勢力図を揺るがしているのが格安スーパーの台頭だ。

   「ロープライスのユートピア」を掲げるロピアは、精肉を中心とした商品力や低価格を武器に出店を拡大。運営するOICグループは2026年2月時点で149店舗、年商6404億円に成長した。

   「トライアル」も低価格路線で成長を続け、2025年には西友を買収。2026年6月期のグループ売上高は初めて1兆円を突破した。

   一方、興味深いのは、同じイオングループでも都市型小型スーパー「まいばすけっと」は店舗を増やし続け、2026年8月時点で1374店に達していることだ。

   こうした変化から浮かび上がるのは、従来型の「街の普通のスーパー」の立ち位置が難しくなっているという問題だ。

   マルエツ、いなげや、カスミなどは、格安店と高級スーパーの中間に位置し、地域の身近な存在として支持されてきた。しかし、物価高が続くなか、まとめ買いなら格安系のロピアやトライアル、少量の買い物なら近所の小型店というように消費者の選択肢が広がり、従来の「普通のスーパー」の存在感が薄まっている。

   26年1月9日付の「食品新聞」によると、日本スーパーマーケット協会の岩崎高治会長は25年12月の会見で、自身が社長を務めるライフの事例を挙げ、物価高に対応するため、

「低価格で販売する商品と付加価値にこだわった商品の二極で対応していくことになる」

と指摘していた。U.S.M.Hも今後の店舗改革について、従来の品ぞろえでは差別化が難しく、若年層や子育て世帯から十分な支持を得られていないと分析している。

   安さで勝負するのか、品質や総菜などの独自性で客を呼ぶのか。中間的な品ぞろえの「普通のスーパー」では、競争に勝ち残りにくくなっている状況がうかがえる。

「近所のスーパー」が消えていく 問われる地域の買い物環境

   「普通のスーパー」が消えていくとなると、企業の経営問題だけでは済まない。

   U.S.M.Hは閉鎖対象の具体的な店舗をまだ公表していないが、井出社長は地方・郊外の店舗が多くなる可能性が高いとの見方を示している。

   車を運転できない高齢者などにとって、近所のスーパーは生活に欠かせない。もし店舗がなくなれば、途端に「買い物弱者」になってしまう恐れがある。

   イオンのような巨大グループでさえ、従来のスーパーのあり方を見直さざるを得なくなった。ニーズや社会情勢の変化によってスーパー業界は大きく変化していきそうだが、それは消費者にとっていいことばかりではなく、再編・統合により「買い物の選択肢が狭まる」という未来につながる可能性もある。

   毎日の買い物で頼りにしていた「近所のスーパー」が、急に消えてしまう事態が今後は続発するかもしれない。

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