障害者福祉施設で働いていた「るな」さん(当時16歳、仮名)が兵庫県警に暴行容疑で逮捕・勾留され、摂食障害等を発症して亡くなった。この問題を巡り、遺族が国と県を相手取り、違法な逮捕・勾留が亡くなった原因だったとして、約1億900万円の損害賠償を求める裁判が2026年10月21日、神戸地裁で始まった。この日は、るなさんの母親が「娘は無実」と約10分にわたって意見陳述を行った。一方、国と県は争う姿勢で、請求を棄却するように求めている。釈放後の体重は逮捕前と比べて約10キロ減少訴状などによると、亡くなった「るな」さんは2025年2月、母親が理事長を務める障害者福祉施設で、他の利用者にかみつこうとした重度の知的障害がある利用者を止めに入った際、「複数回、手のひらで顎付近を押さえつけた」などとして、25年6月に暴行容疑で逮捕され、18日間にわたり身体が拘束された。その後、るなさんは不起訴処分となったが、警察の取調べで精神的に追い込まれ、急性ストレス障害(ASD)、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症し、摂食障害などに陥った。釈放後の体重は逮捕前と比べて約10キロ減少。その後も症状は改善することなく、25年12月、低栄養状態により16歳で亡くなった。そのときの体重は約20キロまでに減少していた。一方で、26年3月には通報した利用者から遺族に対して「オーバーに言ってしまった」などと書かれた手紙が届いたという。「娘も、守られるべき一人の人間ではなかったのですか」この日、原告のるなさんの母親が「潔白」を示す白いスーツ姿で「娘は無実だと、私が訴えます」と、約10分にわたって感情を込めながら意見陳述を行った。「私は、理事長として、娘を厳しく育ててきました。(仕事で)褒めたことは、一度もありませんでした。その私が今、母親として、そして娘の支援を見てきた一人の専門職として、伝えます」とし、「娘がしてきた支援は、素晴らしかった」と、るなさんの仕事ぶりをたたえた。「私が福祉のプロとして、その支援の意味と、一つひとつの事実を伝えます。その場にいた人たちの声、日々の支援の記録、残された証拠をもって、娘の無実を証明します」こう訴えた。警察と検察に対しては、「人々を助け、命と人権を守る立場にあると、私は信じてきました。娘も、守られるべき一人の人間ではなかったのですか。疑いをかけられたとしても、その人の声を聞き、命と尊厳を守ることを、忘れないでください」と述べた。るなさんが受けた「人質司法」について、「娘の身体を拘束する必要がなぜあったのか。その間、娘の声を聞き、命と尊厳を守っていたのか。私は、その事実と判断の根拠を明らかにすることを求めます」「娘は、自分が悪いことをしていないのなら、謝ってほしいと話していました。そして、『謝ってくれたら、ちゃんと許せる』と言っていました。これは、娘自身の言葉です。娘が悪いことをしていなかったのなら、娘に謝ってあげてください」「許すことは、娘に起きたことを、なかったことにすることではありません。起きたことを確かめ、間違いがあったのなら認め、謝り、責任を引き受けて改める。そして、同じ苦しみを繰り返さないために、何を変えるのかを示す。その先を、一緒に考える。それが、私と娘が大切にしてきた福祉です」母親は、このように話した。さらに、「娘の命はいつまでも人を思い、人を支える命です。私は、娘が大切にしてきた思いと、私を支えてくださる人たちから受け取った支えを、これから生きる人たちの命を守ることにつなげます。娘が生きて人を支えてきたことを、なかったことにしないでください」と訴えた。取り調べの録音録画データ「決定的な証拠に」原告代理人を務める佐々木正博弁護士は裁判後の記者会見で、取り調べの録音録画、任意同行や身体拘束時の警察・検察の記録などの公開を求めていくとし、「るなさんが身体拘束を受けた18日間に何があったのか。その記録は捜査機関の手元にある。捜査が適法、適正と主張するのであれば、その根拠となる資料を明らかにすべき」と訴えた。また、取り調べの録音録画のデータについて「決定的な証拠になると思う。事案の真相解明において必要不可欠で、裁判所の積極的な指揮を期待したいと思う」と述べた。るなさんの母親は、「娘がやっていないことに対して、謝ってほしいと一番の思い。やむを得ず、こういう形(裁判)にはなっていますけれど、私としては、国と県が争う姿勢を見せたとしても、誠実に事実を伝えていきたいと思う」と語った。
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