「バングラデシュから労働者10万人受け入れ」は否定されたが 高市首相の外国人政策で働き手が増える分野も

   高市早苗首相は10月27日、来日したバングラデシュのラーマン首相と会談し、日本企業によるバングラデシュへの投資が今後5年間で1兆円に達する見通しだと伝えた。

   すると直後からSNSで「日本政府がバングラデシュから10万人の労働者を受け入れることで合意した」という誤った情報が広がった。

   この影響もあり、29日になって外務省の報道官がX(旧ツイッター)で「首脳会談でのやり取りを含め、そのような事実はない」と否定した。

   なぜこのようなデマが流れたのだろうか。

  • 高市首相(右)とバングラデシュ・ラーマン首相(首相官邸ウェブサイトより)
    高市首相(右)とバングラデシュ・ラーマン首相(首相官邸ウェブサイトより)
  • 2025年8月に横浜で開かれた、第9回アフリカ開発会議(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
    2025年8月に横浜で開かれた、第9回アフリカ開発会議(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
  • 高市首相(右)とバングラデシュ・ラーマン首相(首相官邸ウェブサイトより)
  • 2025年8月に横浜で開かれた、第9回アフリカ開発会議(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

高市政権が掲げた「秩序ある共生」のための外国人政策

   昨年8月にも、同じようなデマの流布が起こっている。国際協力機構(JICA)が国内4市をアフリカ4か国の「ホームタウン」に認定したところ、移民が増えるという誤情報が広がったのである。4市には問い合わせや苦情が殺到し、JICAは事業を撤回することとなった。

   こうした誤情報に世論が左右される背景には、外国人の増加に対する不安や不満の高まり、そして日本の外国人政策が抱えるねじれがある。

   昨夏の参院選では「日本人ファースト」を掲げる参政党が、自民党の支持層を切り崩して躍進した。それもあってか、高市首相は昨秋の自民党の総裁選で、外国人政策を「いっぺんゼロベースで考えるつもりです」と語り、自民党から離れかけた保守層の期待を集めて総裁に選ばれ、首相に就任した。

   そして高市政権は、今年1月に「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」という外国人政策の新しい方針をまとめた。

   方針は、一部の外国人による違法行為やルールからの逸脱について、「国民が感じている不安や不公平感に対処する」ことを基本的な考え方に掲げている。在留の審査で、税金や社会保険料をきちんと払っているかを厳密に確認。また、永住の許可には日本語力を求め、帰化の条件も厳しくする方向となった。

   方針をまとめる前の昨年12月にNHKが行った世論調査では、国籍取得の条件を厳しくするなどの政府の方針に7割が賛成している。

実は広がる受け入れ枠と「育成就労制度」

   これだけを見れば、外国人の受け入れを絞り始めた印象を受けるが、実際にはそうでもない。働き手として受け入れる枠は、今より大きく設定されているのである。

   まず、2027年4月から「育成就労制度」を設けることとなった。その目的を出入国在留管理庁の資料から引用する。

「育成就労産業分野(育成就労制度の受入れ分野)」において、我が国での3年間の就労を通じて特定技能1号水準の技能を有する人材を育成するとともに、当該分野における人材を確保すること。(出入国在留管理庁「育成就労制度の概要」より)

   つまり、人手不足の分野で外国人を受け入れ、人材を確保することが目的に明記されているのである。

   この制度には2029年3月末までの受け入れ上限が設けられ、「特定技能」と合わせた上限は約123万人となっている。

   2025年6月末に「特定技能(※1号=通算5年の在留が可能)」と、「育成就労」の前身となる技能実習で日本にいた人は、合わせて約78万人だったことを考えれば、枠の大きさがわかるだろう。

外国人なしでは回らない現場と、建前と本音

   2025年10月末の外国人労働者は257万1037人で、13年連続で過去最多を更新した。外国人を雇う事業所の6割以上は、従業員30人未満の小さな職場である。

   また高齢化による人材不足が顕著となっている介護分野では、2040年度に必要な職員が2022年度より約57万人多いと国は見込んでいる。

   それ以外にも外食、清掃、農業、建設、運送......さまざまな分野で、すでに外国人の働き手なしでは回らなくなりつつある状況なのだ。政府も産業界も、本音では外国人の労働力を受け入れて現在の生活をキープしたいはずである。

   だが、外国人増加への不安の声をくみ取って支持を集めてきた高市政権は、建前と本音の間で、言葉を選びながらつじつまを合わせているように見える。

   看板となるもの言いは厳しいのに、受け入れの枠は広がっている。この実情のズレが、デマの広がる土壌になっているのではないか。

   今回のデマから学ぶべきは、現代日本の抱える人材不足問題を、誠実に考えることだと言えるだろう。

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