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なぜ遅刻してはいけないのか? 社会人に当たり前の基本ルールを新入社員にどう教える?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE26(後編)】(前川孝雄)

   「前川孝雄の『上司力(R)』トレーニング~ケーススタディで考える現場マネジメントのコツ」では、現場で起こるさまざまなケースを取り上げながら、「上司力を鍛える」テクニック、スキルについて解説していきます。

   今回の「CASE26」では、時間厳守、体調管理、早退・欠勤対応など、社会人の基本ルールがなかなか身に着かない...そんな新入社員の教育に悩むケースを取り上げます。

新入社員には「体調管理」を励行させる

   <なぜ遅刻してはいけないのか? 社会人に当たり前の基本ルールを新入社員にどう教える?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE26(前編)】(前川孝雄)>の続きです。

   日頃からの体調管理も、社会人として働くうえで基本となるルールです。しかし、新入社員は新社会人となった環境のなか、慣れない職場生活の緊張や疲れもあり、体調を崩しやすいもの。そこで、新入社員に対しては、あらかじめ体調管理のポイントを示唆しておくことも大切です。

   日頃からの規則正しい食事、睡眠や適度な休息は基本です。加えて、仕事内容やお客様との関係で、ここ一番という時には、さらに万全な体調管理に気をつけます。大事な仕事や約束の前日には夜更かしや飲酒を控えることや、生ものなどお腹をこわしやすい食事は避けるなどです。

   ここ数年は、新型コロナウィルス感染予防には注意が集まりました。同様に、インフルエンザなども流行期の前には必ず予防接種を受け、うがいと手洗いを徹底し、予防用のマスクを着用するなど、備えを怠らないことです。家族が風邪をひいたら、使う食器を分けて感染を防ぐといった自衛策を講じることも大事です。

   上司・先輩が見本行動を見せつつ、新入社員に注意を促すとよいでしょう。

   とはいえ万全を期していても、人間ですから体調を崩してしまったり、不慮の事故に遭ったりすることもあるでしょう。その結果、遅刻や早退・欠勤をする場合には、迷惑をかける職場や関係先にできるだけ早く連絡し、お詫びをし、対応を相談することが必要です。

   メール、電話、メッセンジャーなどを駆使して確実に伝わるように連絡することも肝要です。新入社員には、こうした点の心構えも教えておきましょう。

相手への影響に想像力を働かせるよう促す

   ここまで、基本ルールの代表例として「遅刻厳禁」や「体調管理」にふれました。こうした基本ルールの大切さの理解にあたっても、基本マナー(本連載の「CASE25」参照)と同様、職場や同僚やお客様など、周囲や相手の立場に立って、その意味を考えさせて納得させること―働く心構えの習得―が大事です。

   遅刻も然りですが、自分がルールを守れないことで周囲や相手にどのような影響が及ぶか、相手がどのように感じるかを想像させるのです。

   ルールが順守できない新入社員に対しては「会議に遅刻したら、定刻までに会議を準備し、時間通りに会議を進行しようとしている主催者の身になってどう感じる?」「相談を予定しているお客様をお待たせしたら、多忙な相手はどう感じる?」といった問いを投げかけて、自分ごととして考えてもらうとよいでしょう。

   ルール順守の大切さについては、周囲や相手を慮ることができるようにアドバイスしていくことが大事です。

「信頼残高」を積み上げる大切さを伝える

   新入社員に基本ルールの重要性を理解させるうえでは、「信頼残高」を増やすというとらえかたを伝えることも有効でしょう。

   対上司・先輩でも、対お客様でも、人から信頼を得るためには日頃からの誠実な行動の積み上げが大事です。いつもきちんと挨拶する、遅刻はしない、約束は必ず守る、敬語や言葉づかいに配慮する、場をわきまえた行動をする、誰にでも配慮する...など。ごく小さな行動ですが、常に怠らないことが大切です。

   これを貯金に例えて「信頼残高」と考えます。特にお客様への信頼がものを言う仕事にあっては、日頃からの言動によって信頼残高を増やしていくことがとても重要です。

   新入社員であればなおのこと、いきなり「大きな仕事で成果を上げる」ことを目指すのは難しい。したがって、日々の小さなルールや約束を地道に守り、積み上げていくことが信頼を築くことを伝えましょう。

※「上司力」マネジメントの考え方と実践手法についてより詳しく知りたい方は、拙著『部下全員が活躍する上司力 5つのステップ』(FeelWorks、2023年3月)をご参照ください。
※「上司力」は株式会社FeelWorksの登録商標です。


【プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお)
株式会社FeelWorks代表取締役
青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授

人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業FeelWorksを創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶ パワハラ予防講座」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、一般社団法人 企業研究会 研究協力委員、一般社団法人 ウーマンエンパワー協会 理事なども兼職。連載や講演活動も多数。
著書は『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『コロナ氷河期』(扶桑社)、『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)、『本物の上司力~「役割」に徹すればマネジメントはうまくいく』(大和出版)、『人を活かす経営の新常識』(FeelWorks)、『50歳からの人生が変わる 痛快! 「学び」戦略』(PHP研究所)等30冊以上。最新刊は『部下全員が活躍する上司力 5つのステップ』(FeelWorks、2023年3月)。