2024年 4月 19日 (金)

虚心に「美」を求める 鋳鉄の道具「南部鉄器」

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   岩手県盛岡市は、北上川と中津川、雫石川が合流する土地に栄えた城下町。その紺屋町の街道沿いに、南部鉄器「釜定」がある。

   南部鉄器と聞いてすぐに思い浮かぶのは鉄瓶だが、釜定の最近の人気商品はオイルパンや洋鍋だという。シンプルで繊細で、使い勝手がよく、どこか北欧モダンを思わせる。

   「日本の台所には物が多すぎる。整理して、すべてを賄える鍋とパンを、そして日本にしかない日本人の道具をと考えました」と「釜定」三代目の宮伸穂さん。

   南部鉄器は鋳鉄の道具。内と外と二つの鋳型を土でつくり、その隙間に溶かした鉄を流し込んで成型する。

   工房には長年使い込んださまざまな道具が並ぶ。しかし「何から何まで変わっている」と言う。

変えないものと変えてゆくもの

霰模様のある鉄瓶用の鋳型を修理する宮伸穂さん
霰模様のある鉄瓶用の鋳型を修理する宮伸穂さん

オイルパン(右=40.5×21.5×H7.5cm 6825円)と鍋敷き(左=格子パネル小:13×13×1cm 2415円)
オイルパン(右=40.5×21.5×H7.5cm 6825円)と鍋敷き(左=格子パネル小:13×13×1cm 2415円)

   原料の和銑(わずく:砂鉄と木炭によるタタラ製造)は洋銑(ようずく:鉄鉱石と石灰、コークスによる銑鉄)になった。

   また明治の頃までは、一つの鋳型から一つの製品しかつくれなかった。いまは鋳型を修理して繰り返し使う技術がある。その方が値段も安くできる。

   もちろん手は抜かない。五十とも百とも数える鋳鉄の工程だが、宮さんは基本を大事に守りつつ、手仕事にしかできない部分を習熟させている。

「伝統工芸には、変えてはいけないことと、変えるべきことがあります。たとえば鉄は錆びる。錆びにくくするためには、材料を吟味することと、漆の焼き付けは変えられない。でも作業の効率を上げるためには、機械も取り入れる」。

   いいものを、できるだけ安価に。実用の道具としての使いやすさ、道具以上の何かをもたらす魅力、きちんとつくる日本のクラフトマンシップ。

   時代や流行に影響されず、いま必要とされるものをつくる現代のものづくり。

   味の感じ方には個人差があるが、鉄瓶で沸かした湯はまろやかで美味しい。また、鉄器で料理すると、からだに必要な鉄分が摂れることが実証されている。

「住む。」編集部



住む。表紙
◆住まいと暮らしの雑誌「住む。」 http://www.sumu.jp/
住まいと暮らしに関するいろいろな知恵や工夫が学べる季刊の雑誌。昔から伝わる気候風土に適した知恵、あるいは現代の先端技術などの知識を提供し、ときには、食や衣まで含めて考える。また家から排出されるCO2の量を削減したり、ゴミを減らすことなども考慮した「住まい」を考える。住まいは、暮らしこみの姿であり、生き方の表現。この雑誌では、そうした住まいと暮らしに関わるさまざまな知恵や工夫、そして住まいの本質を「知ること」が愉しめる。発行・泰文館。

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