2024年 4月 23日 (火)

【書評ウォッチ】科学的「ツッコミ」で日常面白く 青空・日食・原発・ねつ造…

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   科学技術への関心が高まっている。といっても、簡単にわかることではなさそうだし、学者の科学論はどうも小難しい。そうしたときにお薦めの『気になる科学』(元村有希子著、毎日新聞社)が読売新聞に。新聞記者による、軽めの科学エッセイ集だ。日常生活に根ざした思いのあれこれが面白い。

   今の閉そく感打破を「やはり技術革新で」と科学に期待する向き、反対に原発事故から技術神話に疑問をつきつける意見も出ている。大学進学では理工系人気の兆しも。哀しいかな、これしか期待するものがなくなった面もあるのだが、ここらで科学っぽい思考に触れておくと時代を読む助けになるかもしれない。【2013年1月20日(日)の各紙からI】

白黒風景を鮮やかに色づける

『気になる科学』(元村有希子著、毎日新聞社)
『気になる科学』(元村有希子著、毎日新聞社)

   「科学知識を増やしてくれるとは思えない」と、評者の宇宙物理学者・須藤靖さん。それぐらい親しみやすい内容ということか。「日常をちょっぴり科学的にツッコムだけで身の回りの白黒の風景が鮮やかに色づいて見えることに気づかせてくれる」とも語る。

   種牛のむなしい性生活に涙し、いい加減なナンチャッテ科学者に怒る。青空研究に目を輝かせ、金環食をまだ来ぬ運命の人からの指輪に見立てる。一方で、地震、原発事故や論文ねつ造、食や介護の問題にも触れた。

   盛られた103篇には鋭い科学環境部デスクの視点が。「もう理科は苦手、理系は嫌い、なんて言えなくなります」とは出版サイドのPR文句だが、それも結構うなずける。

   『江戸の天才数学者』(鳴海風著、新潮選書)は、和算家らの生きざまを追いながら、日本人の科学的情熱が江戸庶民から連綿と続いていることを示す一冊。「知識社会創造の道を開いた気概を描き出す」「(技術革新に向かう)心の持ち方を考えさせる」と、読売新聞の読書面ではなく科学面が書いている。

すごい一句に涙

   ほかには、『時代を生きた名句』(高野ムツオ著、NHK出版)の中にある凄い一句が毎日新聞に載った。釜石の高校教師だった照井翠さんの作。

寒昴(かんすばる)たれも誰かのただひとり

   その作意は、著者の評釈と評者・渡辺保さんの解説を読むとよくわかる。

   大震災のとき、生徒400人を無事体育館に避難させたのだが、間もなく状況がわかってくる。孤児になった生徒4人、片親になった生徒16人、家を失った生徒多数。夜の体育館にこらえきれずに泣く声があふれた。涙を抑えて校庭に出た照井さんが振り仰ぐ夜空に寒中の星座スバル。「思わず胸が熱くなった」と紙面にある。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

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