【書評ウォッチ】「最ユニーク」な大震災奮戦記 悲壮感ほとんどゼロの実録コミック

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   あれから2年、東日本大震災の関連本は山ほど出たが、「最ユニーク」といってもいい1冊が評判だ。コミック・マンガに写真をプラスした実録自宅再建エッセイ『ナガサレール イエタテール』(ニコ・ニコルソン著、太田出版)で、津波に生活を破壊された被災者母娘3人の奮戦記。中身のすさまじさを悲壮感ほとんどゼロのタッチで描き飛ばした。評価は人によるだろうが、そのバイタリティはとにかくすごい。【2013年4月7日(日)の各紙からI】

被災後を最後は涙と笑いで

『ナガサレール イエタテール』(ニコ・ニコルソン著、太田出版)
『ナガサレール イエタテール』(ニコ・ニコルソン著、太田出版)

   「こんなふざけたタイトルでいいのか?」と、読売新聞の評者・写真家で作家の星野博美さんは最初に思ったそうだ。「ぐいぐい引き込まれ、最後は涙と笑いで顔がぐしょぐしょになっていた」とも。まさにそういう本だ。先生方の理論や屁理屈では、こうはいかない。

   著者のニコさんとは日本人女性のペンネーム。宮城県山元町出身で、専門学校卒業後「東京で就職が決まった」と嘘をついて実家を飛び出し、フリーのイラストレーターになった(出版社サイトから)。ところが、大震災が。そこから、本は「流される」「つながる」「発掘する」「どうする?」と、全12話で被災後の日々を追っていく。

   母(コミック中では母ルソン)と祖母(婆ルソン)は2階に逃げて助かったが、ショックと避難生活で祖母の認知症が進行。「家に戻りたい」と繰り返すばかり。うんざりとへこむ母娘だが、思えば祖母が病弱だった夫を支えながら働きづめに働いて手に入れた家だ。「よしっおばあちゃんの場所を取り戻そう」と一念発起した矢先、今度は母の病が発覚。

「笑い飛ばさなければ乗り越えられない」

   お金が足りない。被災地では大工も足りない。難問直面の母娘を救ったのは、家の再建が決まったとたんに生気を取り戻した祖母の生命力だったという。大震災を市民の日常感覚からとらえて、なんともたくましい。抽象論や統計を軽く超えてしまう説得力がある。「このくらい笑い飛ばさなければ乗り越えられない経験だったということ」に気づくと評者・星野さん。ネットサイトでも反響が広がっている。

   ところで、活字離れや出版不況が言われ続ける中で、文庫本売れ行き微増のリポートが日経新聞「活字の海で」コーナーに。前年から11年0.8%、12年0.5%のアップ。

   村上春樹『1Q84』(新潮文庫)やライトノベルの人気に引っ張られた面もあるが、「高額な単行本は買わないが安い文庫なら」という読者が多いのではないかという。一方で各紙読書面には高価な書物も目立つ。数千円、ときには万を超す本も。市民のための本紹介と言えるか、考えてほしいところだ。出版社サイドも価格を下げる努力がもっとあっていい。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

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