あの日、海に呑み込まれた石巻市立病院の真実 これまでなぜ語られなかったのか

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   『海の見える病院』は2013年3月に医薬経済社から出版された。筆者の辰濃哲郎氏は出版社が発行する医薬業界誌の記者である。東日本大震災の直後、被災地の医薬品供給の状況を取材するために向かったのがこの本のきっかけになっている。宮城県石巻市立雄勝病院は入院ベッド数40床、医師2人、歯科医師1人職員5人、看護師20人の小さな病院である。

   あれから2年間、関係者のインタビューを重ね、病院の風景を詳細に描いた。突然襲い掛かった津波、その時病院は――。仲間を失い、かろうじて生き延びた人たちの話から、つらい人間関係が窺える。このドキュメンタリーの視点は、そうした本文の悲惨な描写より「あとがき」で書いている「なぜ、病院のことがメディアでは報道されなかったのか」というところだ。

「語らなかった」理由

『海の見える病院』
『海の見える病院』

   マスコミに登場しなかったのは、報道することが山のようにあったという事情もあるが、病院の人たちが「語らなかった」こともある。なぜなのか。

「命を守る病院で、どんな理由があるにせよ、災害で患者を死なせてしまうことは許されない。それも40人も一度に亡くしてしまったのだから、彼らの心には大きな負担となってのしかかった」

   非番だった職員の負い目、残った者たちが何かを語れば傷つく人がいる。身動きが取れない。病院ゆえの悲劇がそこにあった。

   この本では、亡くなった院長の話がほとんど出てこない。筆者は院長の妻に接触したが、激しく怒られた。立ち入ったことを、なぜ、知らない人に話さなければならないのかと。そして、原稿を書き終えた後、特殊公務災害の認定に関して意見陳述をする妻に会い、ようやく話を聞くことができた。それがあとがきに書かれている。

   妻が言うのは、救出しようとして亡くなった病院職員は該当するはずだと申請したが却下された。同じように却下されている遺族がほかにもいるという。患者を守るため病院に残り、命を落としたことを「善行」で片づけられるのはたまらないと闘っていた。

   院長は船に乗り移り2人の女性を助けたが、遺体は仙台沖で見つかっている。

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