2024年 4月 18日 (木)

霞ヶ関官僚が読む本
2030年の中国はどうなる 「分裂待望論」にみる日本人の自信喪失

   中国については様々な見方がある。今の世論の気分を的確に映し出す週刊誌で人気のある話題の1つは、日本を越えて「世界第2位の経済大国」になった、非民主主義国家である中国が自ら内包する矛盾で分裂し、没落するというものだ。

   しかし、最近出版が続く未来予測本の1つの『2030年 世界はこう変わる アメリカ情報機関が分析した「17年後の未来」』(米国国家情報会議編著 講談社 2013年)の予測では、中国が強権化を進めることはあっても、EUと違い、分裂することは想定されていない。日本で中国への極端な見方が人気を博するのは、日本人自身の自分に対する自信の喪失の反映ではないかと感じる。

「日本人は心を強くもとう」

『日本の起源』
『日本の起源』

   現実主義者として著名な国際政治学者の故高坂正尭氏の遺著となった『高坂正尭外交評論集 日本の針路と歴史の教訓』(中央公論社 1996年)の最後の章は、「アジア・太平洋の安全保障」である。「私は最近、若い研究者に対して、『中国問題は二十一世紀前半の最大の問題だが、それは私たちの世代の問題ではなくて、君らの世代の問題だよ』とよく言う。……中国問題が現実化するのは十~十五年先だ。……より基本的には、中国のあり方とそれが提示する問題は、この何年かの間におこったこととも、歴史書に書いてあることとも違う。まず、中国が弱かったときの行動様式、たとえば以夷制夷は現代中国外交の例外しか説明しない」といい、「部分にも歴史にもとらわれない中国論の出現を、私は心から待ちわびている」と遺言ともいうべきコメントを付した。

   また、中国経済の今後の停滞を冷静に分析した好著『中国台頭の終焉』(津上俊哉著 日経プレミアシリーズ 2013年)は、「むすび」で「日本人は心を強くもとう」と意見する。遠藤誉著『チャイナ・ギャップ 噛み合わない日中の歯車』(朝日新聞出版 2013年)も内部事情に通じた著者の話題が興味深い。

【霞ヶ関官僚が読む本】 現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で、「本や資料をどう読むか」、「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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