【書評ウォッチ】会社で働いてカネを稼ぐ意味とは 雰囲気正反対の2冊

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   人と会社の関係をまったく異なる素材と視点から切りとった本が2冊が出た。つぶれるときに最後まで残って不正を調べあげたサラリーマンたちの『しんがり』(清武英利著、講談社)と、日系二世の女性たちが巨大企業と夢の世界を飛び回った記録『パン・アメリカン航空と日系二世スチュワーデス』(クリスティン・R・ヤノ著、原書房)。内容も雰囲気も硬軟正反対だが、どちらもたしかに存在していた会社と個人だ。企業社会で働いてカネを稼ぐことの意味を考えさせる。それぞれ、朝日新聞と日経新聞の読書面に。【2013年12月22日(日)の各紙からⅠ】

最後まで不正を追及したサラリーマン

『しんがり』(清武英利著、講談社)
『しんがり』(清武英利著、講談社)

   しんがりとは、負け戦のときに最後尾で敵の追撃をかわしながら味方を退却させる役回り。最もきつい戦いだ。本『しんがり』は時代劇ではなく、現代の実話。舞台は1997年に破たんした山一證券。「社員は悪くありませんから」と社長号泣の場面が、今も金融危機のシンボル扱いされる。じゃあ、誰が悪いのか。

   幹部たちまでが我先にと逃げ出すなかで踏みとどまり、債務隠し2600億円の真相究明と顧客への清算業務をこなす人たちがいた。彼らは会社の全盛期には「場末」と呼ばれた余計者扱いされたものだ。この社内調査委員会の7人と支援した5人がなぜ筋を通そうとしたのかを本は見つめていくが、もう一つつかみきらない感じもある。

   理由をつきつめると、人間の生き方そのものに関わるからだろうか。この人たちは一様に不器用で、どうも要領よくは振る舞えなかったらしい。ここにヒントがあるかもしれない。早々に去ったエリートたちが好条件の再就職先へくらいついていったというのに。

   著者は元読売新聞記者、というより企業集団の最高実力者を批判して解任された元プロ野球巨人軍代表。彼自身の行動や受けた仕打ちがサラリーマンの一つの生き方を示していた。なんだかイミシンだ。本を「山一後の世代に勧めたい」と朝日の評者・勝見明さん。

企業と個人が一緒に夢を見られた時代

   これに比べると『パン・アメリカン航空と日系二世スチュワーデス』は、パッと明るい。ただし、いま流行のおもてなし話とは違う。米国が世界のリーダーへと躍進していった1950年代、その威信を世界中に広めようとした大企業の戦略がそこにある。それにのった彼女たちは「ニセイ」と呼ばれ、非白人進出の先駆けとなった。

   著者はハワイ日系の人類学研究者。企業と個人が一緒に夢を見られた時代をジェット旅客機、女性の活躍など、今に通じる側面から描いた。日経の評者は前間孝則さんだ。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

   J-CASTニュースの書籍サイト「BOOKウォッチ」でも記事を公開中。

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