2021年 3月 2日 (火)

元政治記者が書いた幕末、維新の「大政局」

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「松陰の妹を妻にした男の明治維新」(富澤秀機、徳間書店)

   政治記者が書く政局の人間模様は新聞記事の華である。大義を掲げ徒党を組む政治家。陰謀あり、裏切りあり、政局では人間の本性はむき出しになる。政治記者も生き生きとし、読者は記事の行間を読んで政治ドラマを楽しむ。

   この手法で幕末・明治維新の大政局を書いたらどうなるか。著者の富澤秀機は日経新聞の元政治記者。舞台回しの主人公に、松下村塾で吉田松陰の盟友であり、後に松陰の妹、寿(ひさ)と文(ふみ)の姉妹二人と結婚することになった楫取素彦(かとりもとひこ)に焦点を当てた。旧体制を倒し新しい時代を切り開いた長州(山口県)の反幕勢力の動きから、明治の殖産、富国の源流となった上州(群馬県)へと舞台を移して維新前後の政局を描いた。二つの地域をつなぐのが楫取素彦である。

  • 松陰の妹を妻にした男の明治維新
    松陰の妹を妻にした男の明治維新
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「花燃ゆ」文の夫、楫取素彦を追いかける

   吉田松陰は明治維新の精神的指導者であり、安政の大獄に連座して29歳で処刑された悲劇の思想家として、いまもファンがいる。

   2015年1月に始まったNHKの大河ドラマ「花燃ゆ」は、松陰のもとに集まった群像を描いている。主人公は松陰の妹、文。演じるのは井上真央、そして、楫取は大沢たかおである。

   文が最初に結婚したのは、松下村塾から尊王攘夷運動の先頭を走る久坂玄瑞(くさかげんずい)だが、25歳で自刃して果てる。再婚したのが楫取素彦だった。

   この本の前半は、松下村塾の志士たちの動きを中心に幕末の動乱から明治政府が出来ていく様子を、政局ドラマのタッチで描いている。幕末の著名人たちが立ち上がる大義、その人間関係はかつての自民党の派閥抗争のように入り組み、離合集散を繰り返していく。江戸や京都の中央抗争だけでなく、松下村塾周辺の村の姿も描いている。

   松陰門下の高杉晋作、久坂玄瑞らが果てた後、明治政府の中心に生き残った長州の志士たちが座り、村塾出身の伊藤博文、山県有朋らは首相になった。

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