2024年 4月 25日 (木)

科学的知見に裏打ちされた エネルギーの将来を描く「新しい視点」

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健全なる言論市場の意義

   本書は、東京電力ホールディングスの経営技術戦略研究所の研究成果をベースにしたものという。反射的に「東電の我田引水か」と疑う人もあろうが、どうだろうか。

   出自だけを見て利害関係を理由に言論を軽んじる者は、その言論の内容を自らの頭で思考し評価することを放棄している。これは、言論市場によって確からしい結論が多数を占めていくべき民主的社会においては、厳に慎むべき態度ではなかろうか。

   実際に読み通してみれば、科学的知見に裏打ちされた、経済合理性のある議論が冷静に展開されていることに気付くはずだ。陰謀論や政治的思惑によって、こうした議論を歪めてはならない。

   原発事故以来のバッシングは沈静化したものの、東京電力への視線はなお厳しい。そうした中、東京電力の方々や有識者が、本書によってあるべき議論を展開したことに、評者はある種の侠気を見る。それは安定的な電力供給を愚直に行ってきた、世界的にも卓越した技術と使命感を持った集団の危機感の表明であり、日本社会への警鐘である。

   デマや空想を騒ぎ立てる人々が多数居る中で、これに事実と論理で立ち向かう、本書の執筆陣のような人々こそが、勇気ある真の言論人ではないだろうか。

   原発事故と放射線リスクを冷静に論じた中西準子教授、子宮頸がんワクチンの安全性を説明する村中璃子医師や、食品安全に関する悪質なデマと闘うFOOCOM.NETの松永和紀氏もこうした勇気の持ち主として思い浮かぶ。

   そう考えてみて、はたと気づく。先に侠気と指摘したものの、中西教授、村中医師、松永氏そして本書の編著者・竹内氏、いずれも女性なのである。これはただの偶然だろうか。

   門外漢のコメンテータが無責任な発言で世論に影響を及ぼすのを放置し、真の専門家が口をつぐめば、民主政治が衆愚政治に堕するは必定。勇気ある女性たちが心ない中傷を恐れず日本の未来を担う先導役を買って出ている以上、我々男どもも自らの持ち場で、彼女らに恥ずかしくない仕事をせねば面目が立たぬ。

   これら女性リーダーの方々に敬意を払いつつ、認識を新たにした次第である。

酔漢(経済官庁・Ⅰ種)

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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