2019年 11月 20日 (水)

瀬尾一三、異例の企画アルバム
中島みゆきと不動のコンビ

印刷
エーザイが開発したサプリ『美チョコラ』無料モニター募集!

原曲を作った人の想像を超えたドラマティックなもの

   瀬尾一三は1947年生まれ。神戸の大学時代に音楽活動を始め、69年にはフォークグループ・愚としてデビュー、関西のフォークシーンでは知られた存在だった。70年代に入りアルファミュージックで作曲家・村井邦彦の元で修行する形でアレンジャーになった。70年代に活動していたシンガーソングライターで彼の世話になっていない人やグループを探す方が難しい。まだ数少なかったロサンジェルスでのレコーディングを恒常的に行ったことも先駆的だった。「時代を創った名曲たち~瀬尾一三作品集 SUPER digest」「2」の二作は、88年に中島みゆきと出会うまでの名曲たちがほとんどである。彼女を通して彼のことを知った聞き手にとっては驚き以外の何物でもないかもしれない。

   彼が新しい歴史のパイオニアだったのはアレンジャーからプロデューサーになっていったことだろう。もちろん、それまでも歌謡曲やアイドルの世界にもアレンジャーは存在した。瀬尾一三がそうした人たちと一線を引いていたのは歌謡曲などの職業作家たちのアレンジに対して消極的だったことだろう。80年代のスーパーアイドルも手掛けてはいるものの、アルバムには選ばれていない。彼はなぜシンガーソングライターと組んできたのかという質問にこう答えていた。

「アイドルの曲もたくさんやりました。でも、求められているのが結果としての編曲。演奏をレコーディングしている時には来ない歌手も多い。曲は関わったのに本人に会ったことがない。単なる編曲と言う歯車になっただけのような気がして一緒に作った感じがしないんです。シンガーソングライターは自分で作ってますから、ここはこうしよう、この方がいいんじゃないかという話が出来る。それがプロデュースということにつながってます」

   その曲がどんな思いで作られたのか、そんな話をしながら情景やイメージを考えながら共に作り上げる。原曲の世界を作った人の想像を超えたドラマティックなものにする。それが瀬尾一三の音楽マジックにつながっている。

   彼以前のプロデューサーはレコード会社の管理職だったり事務所の社長など、組織を持った人が主でインディペンデントのクリエーターではなかった。彼の後に登場したプロデューサーは、ピアニストだったりベーシストだったり自分もミュージシャンだった人が多い。彼らが手掛けた曲は、その人の色が反映されていることが多い。

   でも、瀬尾一三には、そうした"プロデューサーの色"が見えない。あくまでもその曲の世界として成り立っている。

「それは僕がミュージシャンとしてやってこなかったからですね。全体を作り上げられる。どんな楽器、どんなジャンルの音楽でも自分のイメージに出来ますから」

   中島みゆきの「夜会」は、2013年から新たに「夜会工場」という新しいスタイルを登場させた。「夜会」で上演された曲の名場面・名曲集というダイジェストコンサートである。2017年から18年にかけての「夜会工場2」ではステージ上のミュージシャンの前で立ちっぱなしでタクトを振る瀬尾一三の姿があった。もはや中島みゆきの音楽活動は彼なしに考えられなくなっているように見える。

   今年は音楽活動50周年。

   まさに"生きた伝説"である――。

(タケ)

タケ×モリ プロフィール

タケは田家秀樹(たけ・ひでき)。音楽評論家、ノンフィクション作家。「ステージを観てないアーティストの評論はしない」を原則とし、40年以上、J-POPシーンを取材し続けている。69年、タウン誌のはしり「新宿プレイマップ」(新都心新宿PR委員会)創刊に参画。「セイ!ヤング」(文化放送)などの音楽番組、若者番組の放送作家、若者雑誌編集長を経て現職。著書に「読むJ-POP・1945~2004」(朝日文庫)などアーテイスト関連、音楽史など多数。「FM NACK5」「FM COCOLO」「TOKYO FM」などで音楽番組パーソナリテイ。放送作家としては「イムジン河2001」(NACK5)で民間放送連盟賞最優秀賞受賞、受賞作多数。ホームページは、http://takehideki.jimdo.com
モリは友人で同じくJ-POPに詳しい。

今すぐ無料会員に登録して、コメントを書き込もう!
お知らせ

注目情報

PR
追悼
J-CASTニュースをフォローして
最新情報をチェック
電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中
カス丸

ジェイキャストのマスコットキャラクター

情報を活かす・問題を解き明かす・読者を動かすの3つの「かす」が由来。企業のPRやニュースの取材・編集を行っている。出張取材依頼、大歓迎!