2019年 7月 20日 (土)

「交響曲」の意義を受け継ぎ壮大な世界をつくりだす マーラーの第3番(後編)

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交響曲の描く壮大な世界に当初から自信

 

   すでに2曲の交響曲で、大自然や人間の複雑な感情をも描くことに慣れてきていたマーラーは、第3番で、もっと壮大な世界・・宇宙を含めたこの世のありとあらゆることを描こうと試みます。彼としては、珍しく、全体の構成を各楽章のタイトルを決めることによって、大規模な構造を最初に俯瞰しようとします。のちに、やはり言葉は先入観をもたらし誤解を招く、としてすべて削除してしまいますが、スケッチが完成した段階で、彼は友人に各楽章のタイトルを手紙で知らせています。

夏の真昼の夢
第一部
   導入部 牧羊神がめざめる
    1. 夏が行進してやってくる
第二部
    2. 野の花たちが私に語ること
    3. 森の動物たちが私に語ること
    4. 人間が私に語ること
    5. 天使たちが私に語ること
    6. 愛が私に語ること

   これがそののち、全6楽章へと収れんしていきます。当初は全7楽章として考えられましたが、第7楽章は、次の交響曲第4番へ転用されています。

   すでに交響曲第2番「復活」の第4楽章で、ベートーヴェンの「第九」以来、初めて交響曲に声楽を登場させ、人間の世界を超えた天上への信仰を描き出していたマーラーは、第3番でも躊躇なく声楽を取り入れます。しかももっと大規模な形で・・・すなわち、アルト独唱、児童合唱、女声合唱・・・を取り入れたのです。第4楽章では、R.シュトラウスの交響詩で有名になったニーチェの「ツァラトストラはかく語りき」の一部が歌詞に使われています。

 

   マーラーは、この交響曲の描く壮大な世界に当初から自信を見せていて、友人に、「この交響曲は、世界がいまだかつて耳にしたことがないものだ」と書き送っています。また、弟子のブルーノ・ワルターが作曲小屋を訪ねてきたとき、その周囲の自然に驚いた彼の言葉に対して、マーラーは「眺めるには及ばないよ。すでに僕がすべて作曲してしまったから」と言った、というエピソードは有名です。自然を描き、その背景にある哲学や神話に思いをはせ、人間と、信仰と、天上界とのかかわりを描く・・・マーラーは、ベートーヴェン以来、「人間の知覚しうるもっとも壮大な世界を描く」という交響曲の特性を、自身の指揮者としての現場での技量を活かしながら、綿密なプランニングのもとに、まずは「第3番」という形で結実させたのです。

 

   第1楽章だけで演奏時間が45分、全体では1時間40分かかるこの交響曲は、かつてギネスブックに「世界最長の交響曲」として掲載されていたこともあります。確かに、演奏時間も長い交響曲ですが、そこには、ベートーヴェン以来のウィーンの伝統である「交響曲」を進化させた、天才マーラーのエッセンスが詰まっているのです。

本田聖嗣

本田聖嗣プロフィール
私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でピルミエ・ プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目CDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラマ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを 務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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