2019年 11月 22日 (金)

西日本豪雨から1年後の真備町を歩く 平静な街と生活再建に必死な被災者

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   岡山県倉敷市真備町。2018年7月の西日本豪雨で被災した地域の一つだ。町中が茶色く濁った水に浸かり、人々が病院で救助を待つショッキングな映像は連日、全国に中継された。

   あれから1年、被害の大きかった場所をJ-CASTトレンド記者が歩いた。街は一見「すっかり元通り」の様子だが、取材を進めるとサポートを必要としている人は今も多いと分かった。

  • 西日本豪雨発生から間もない時期の岡山県倉敷市真備町(写真クレジット:ピースボート災害ボランティアセンター)
    西日本豪雨発生から間もない時期の岡山県倉敷市真備町(写真クレジット:ピースボート災害ボランティアセンター)
  • 西日本豪雨発生から間もない時期の岡山県倉敷市真備町(写真クレジット:ピースボート災害ボランティアセンター)
    西日本豪雨発生から間もない時期の岡山県倉敷市真備町(写真クレジット:ピースボート災害ボランティアセンター)
  • 小田川の堤防が決壊したとみられる部分は、そこだけ明らかに違っていた
    小田川の堤防が決壊したとみられる部分は、そこだけ明らかに違っていた
  • 末政川の堤防決壊場所。工事した場所は立ち入り禁止だった
    末政川の堤防決壊場所。工事した場所は立ち入り禁止だった
  • 末政川の流れは小さなものだった
    末政川の流れは小さなものだった
  • 西日本豪雨の際に浸水した真備の街も、1年が過ぎてクルマが多く走っていた
    西日本豪雨の際に浸水した真備の街も、1年が過ぎてクルマが多く走っていた

堤防決壊、こんな小さな川で...

   記者が乗車した井原鉄道の車両が、鉄橋に差し掛かった。眼下には高梁川が流れ、進行方向の後方で小田川と合流している。あの日――集中豪雨で水かさが増した小田川では、複数個所にわたって堤防が決壊、周辺地域にあふれ出した。

   吉備真備駅から小田川に向かい、川沿いをしばらく歩く。この日は水量が少なく、町を水浸しにしたとは想像できない静かな流れだった。気づくと、土手の色が明らかに違っている場所が見えてきた。決壊地点だ。すでに固められているが、かえって目立つ。その近くには、建物は残っているが人の気配が皆無だったり、ブロック塀だけが残っていたりという光景が見られた。

   被害の大きかった地域のうち、小田川の支流、末政川にも足を運んだ。1年前、冠水した様子がテレビで報じられた「まび記念病院」から近い場所で、工事をしていた。確かに川の両岸を整備しているが、「川」と呼ぶにはあまりにも細い流れで驚いた。

   川沿いを少し進んだが、草木に覆われて水面が見えないほど。ところが先は、堤防が決壊したとみられる場所が修復され、取材時点では「立ち入り禁止」だった。

   普段は静かな川や小さな流れが、豪雨と増水で突如濁流と化し、周辺地域に襲いかかかる。記者は2017年の九州北部豪雨の被災地、福岡県朝倉市を取材した際、住民が「いつもは水がチョロチョロしか流れていない自宅前の側溝が、豪雨のときは足をとられそうな勢いの急流となって、恐ろしかった」と証言していたのを思い出した。

行政支援の申請、すべて自力でこなすには負担大

   豪雨の爪あとは残っているが、一方で商業施設は通常営業、クルマは多く行き交い、水田ではイネが育って緑がまぶしい時期を迎えていた。たとえば極端に空き地が増えたような、街自体が大きく様相を変えたとは思えなかった。

「変わっていないように見えるのが、住民の皆さんにとってはしんどいかもしれません」

   J-CASTトレンドの取材にこう話したのは、岡山NPOセンター・地域連携センターの主任アドバイザー、詩叶純子さん。豪雨被害発生当初から現在も、真備町で支援活動を続けている。

   水害は大地震や津波と違い、水が引いた街は「見た目」では以前とあまり変わらないかもしれない。だが水に浸かった住宅は、カビが広がってニオイがひどくなり、傷みも進んで住み続けられる環境ではなくなるケースが少なくないのだ。

   西日本豪雨から1年が過ぎた現在は、被災者の生活再建に力を入れている詩叶さん。災害によるさまざまな喪失感やトラウマは、暮らしが経済的に苦しいままだと乗り越えるのが難しい。一方で、行政の支援制度の利用には、被災者が自ら動いて申請する必要がある。

   り災証明書の取得から始まり、基礎支援金、加算支援金、住宅の公費解体と、制度の種類が多く、自ら書類を用意して申請しなければならない。民間の火災保険や生命保険に加入していれば、その手続きもある。被災で精神的なダメージが大きい人たちが、自力ですべてをこなすのは負担が大きい。

   住まいの選択も迫られる。まず真備に住み続けるかどうか。そのうえで、元の場所で壊れた家を修繕するか新築するか、場所を移るなら家を購入するか賃貸か。いずれにしろ、家族で重大な決断が迫られる。それぞれのケースで、家計も考えなければならない。

   詩叶さんらは現在、被災者が生活再建のために確認すべき内容を分かりやすくまとめた「チェックシート」を試作している。弁護士や司法書士、ファイナンシャルプランナーといった専門家の力を借りて、個々の被災者に現状を把握してもらったうえで、新たな生活へ踏み出せるように促す取り組みだ。仮に未申請だった各種支援金が受給されれば、被災者にとっては生活上の大きな助けとなる。将来に向けての一歩が踏み出せるだろう。

   災害からの復旧が一段落すると、被災者への注目は減る。だが生活は厳しいままだ。今後の中長期的な支援としては、さまざまなニーズに柔軟に対応できる金銭的な寄付が最も有効になるだろう。一方で詩叶さんは「忘れないでいてもらうことが、被災した皆さんにとっては大きいと思います」。自分たちが取り残されているのではないかという不安が、何よりもつらいのだ。

(J-CASTトレンド編集部 荻 仁)




2019年8月16日追記:西日本豪雨の災害支援を行なう組織のネットワーク「災害支援ネットワークおかやま」は、寄付を受け付けている。また被災者の生活再建をサポートする「住まいと暮らしのリカバリーCafe」は、岡山県青年司法書士協議会が支援金を充てて運営している(それぞれ団体名をクリックすると、リンク先に飛びます)。

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