2021年 9月 26日 (日)

ゴリラになる話 山極寿一さんは強弱で決着をつける人間社会に物申す

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知恵と思索、そして情念

   上記で30回を数える「感覚的身体論」は、カラダにこだわるTarzanらしいコラムだ。筆者を代えながら数回ずつの連載でつないでおり、この「遊牧民」でもすでに、野村萬斎さん神田松之丞さんの「身体論」を採り上げた。今回の山極さんは初回で、次回はゴリラ観察の「気づき」を書くそうだ。興味がある向きは同誌をお求めいただきたい。

   動物園でしか見ていないが、ゴリラはいかつい見た目とは裏腹に、実は繊細な「心」を持っているのではないかと思わせる風情である。類人猿の代表的3種のイメージを2字で表せば、チンパンジーは知恵、オランウータンは思索、ゴリラは情念とでもなろうか。

   第一人者がその領域で書いた文章は、素人でも自信を持って引用できる。読んで楽しく、書いて美味しい。ハイエナ冥利と言っては卑下しすぎだろうが、実にありがたい存在だ。ただし、元の作品にオリジナリティがあるというのが大前提だ。

   熟した実を狙うゴリラは早起きで、オスは振り向かず、ケンカは仲裁を前提に始める...どれも私には驚きであり、多くの人に知らせたいという心持ちにさせる。現代人はゴリラ以下、実はサル並みではないかという指摘を含め、示唆に富む。これこそ、読者と一緒にさまよいたいと私が念じる、情報と表現のオアシスである。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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