2020年 12月 5日 (土)

「東京五輪」マスコミのお祭り騒ぎは変わらない【2020年大予想(1)】

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   2020(令和2)年が幕を開けた。J-CASTトレンドでは、年初にあたり各界の識者に今年の「トレンド」を占ってもらった。

   初回は、東京五輪とマスコミ。地元開催だけに、テレビを中心に報道が過熱しそうだ。上智大学新聞学科教授の碓井広義氏は、マスコミに「メディアの本分は何か」を問いかける。(聞き手はJ-CASTトレンド編集部・荻 仁)

  • 上智大・碓井広義教授は、テレビ局側の間違ったサービス精神を指摘した
    上智大・碓井広義教授は、テレビ局側の間違ったサービス精神を指摘した
  • 上智大・碓井広義教授は、テレビ局側の間違ったサービス精神を指摘した

選手を「キャラ化」、視聴者が飽きるまで消費し尽くす

――従来の五輪とマスコミ、特にテレビ報道をどう見ていますか。

碓井 日本のテレビは「五輪バラエティー」になっています。それはなぜか、考えてみましょう。
   まず、五輪はスポーツ中継の王様で、テレビにとっては強いコンテンツです。同時に、放映権をはじめ巨額のマネーが動くメディアイベントでもあります。
   競技や試合そのものはどこが放送しても同じ。そこでテレビ局は、「どうパッケージにして見せるか」に走る。現地に大勢のスタッフを送り込み、人気芸能人を投入して視聴者を集めたい。視聴率さえ取れれば「何でもあり」です。しかし、「金メダル至上主義」をあおったり、選手を「キャラ化」して笑わせようとしたりする姿勢は感心しません。

――昨年のラグビーワールドカップ(W杯)で大活躍した日本代表の稲垣啓太選手が「笑わない男」として、テレビ出演やイベントのたびに「今日は笑わないんですか」と言われ続けました。本人が楽しんでいるならよいのですが......。

碓井 (個性が強い選手といった)視聴者の関心を引く材料があると、マスコミにはありがたい。そうなれば、視聴者が飽きるまでとことん選手を消費し尽くす。アスリートを都合よく利用し、必要がなくなったと判断すればそっぽを向く。

――視聴者からはしばしば、こうした報道に批判が出ていますが、テレビ局はどう受け止めているのでしょうか。

碓井 五輪のような大きな商機を前にすれば、批判の声を聞いてもやめられません。芸能人の起用やバラエティー化は既に構造的なものとして定着し、東京五輪でも同じ手法が続くと思います。視聴率が稼げれば「テレビをご覧の皆さんだって、楽しんだでしょ」というわけです。
   しかし実際は、スポーツそのものを見たい視聴者に対するテレビ局側の間違ったサービス精神です。両者の間のギャップが埋まらないまま、東京五輪では「お祭り感覚」の放送が連日続くのか、と思ってしまいます。
   ただ、TBSが安住紳一郎アナウンサーを東京五輪の総合司会に据えたのを私は評価しています。タレント起用でなく、五輪バラエティーでなくきちんと報道しようとしている局の姿勢がうかがえます。

「スポーツの魅力をきちんと伝える」ことこそが役割

――次に「若者とメディア」についてお聞きします。普段、学生と接するなかで「ニュースの見方」にどのような変化を感じますか。

碓井 「紙の新聞」を読まない。テレビのニュース番組さえ見ない。これがいまや当たり前になりました。基本はスマートフォン(スマホ)です。朝起きてから、スマホでインターネットのニュースサイトにアクセスしたり、好みのニュースサービスのアプリで記事を読んだりする。さらにツイッターで気になる話題のハッシュタグを拾っていく。5分程度で最新の情報を収集します。学生にとってはスピードが重要。「昨日の話が書かれている紙の新聞を読んでどうするんですか」というわけです。

――紙の時代とネットの時代を比べて、ニュースとの対し方にどのような違いが出ているのでしょうか。

碓井 今日の学生は、自分が欲しい情報のみを取りに行く傾向があります。結果、特定分野には詳しいが、興味がない話題には関心を示さず情報量も乏しい。ところが、たとえ政治や経済の出来事を知らなくても、恥ずかしいとは思っていません。知りたいことを知っていればよいというスタンスです。

――もっと広く世の中のことを知っていた方がよいと思いませんか。

碓井 うーん、今は一概にそうとも言えない気がします。特定の分野については大人が知らないことでも非常に詳しい。広く浅い教養が本当に大切なのか......。それにスマホでネットにつながっている今日の学生は誰しも、程度の差こそあれ少しはニュースに接しているのも事実です。全く知らないわけではない。
   もうひとつ、ネットにあふれる情報から価値あるものを抜き出せるか、フェイクを見分けられるかといったリテラシーを高める教育が、若い世代に対しては重要になるでしょう。

――若者のメディアに対するスタンスが変わる中、2020年は旧来の大手マスコミが変わる気配はあるでしょうか。

碓井 テレビは若い視聴者を取り込もうと、例えばスポーツ中継で「応援団」「特別キャスター」と称してタレントを使う。これは先に説明したとおり、視聴者が欲しているわけではありません。でもそれをやめるとも思えず、ますます「テレビって、どうなの」と言われてしまいそうな気がします。
   東京五輪で言えば、マスコミが果たすべき役割は「スポーツの魅力をきちんと伝える」です。私たちは一流アスリートによる競技が生み出す「感動の瞬間」に立ち会いたいのであり、バラエティー色が欲しいわけでも、選手を面白おかしくキャラ化してほしいとも期待していません。
   社会全体でみれば、テレビの力はまだまだ大きい。だから「伝えないこと」による悪影響も考えてほしい。例えば、首相主催の「桜を見る会」を巡る一連の問題への追及が続いていた時期に、「沢尻エリカ逮捕」が報じられるとマスコミは一斉にそちらへ向いてしまった。「これは政府による陰謀だ」という説はさすがに笑い話ですが、テレビジャーナリズムはどこへ行ってしまったのかと呆れます。2020年、大手マスコミは今一度襟を正して報道に向き合ってほしいと願っています。

碓井広義(うすい・ひろよし)
上智大学新聞学科教授。博士(政策研究)。専門はメディア文化論。番組制作会社「テレビマンユニオン」プロデューサー、慶応大助教授、東京工科大教授などを経て、2010年より現職。毎日新聞や北海道新聞、日経MJなどに放送時評やコラムを連載中。著書に「ドラマへの遺言」(倉本聰氏と共著、新潮新書)ほか。

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