2021年 6月 13日 (日)

未知のウイルスと戦い、生き残り発展した人類の歩み

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■『感染症の世界史』(著・石弘之 角川ソフィア文庫)

   新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっている。リーマンショックを100年に一度の危機と言っていたが、このコロナ・ショックは、経済面だけでなく、社会面や生活面にもわたって、これを大きく超えるショックの様相を呈している。当初の風邪と変わらないといった楽観論から、最近の各国の医療崩壊やロックダウンの現実からくる悲観論まで、この数か月、我々は大きく揺れてきた。

   本書は、人類誕生の時から現代に至るまでのウイルスとの闘いを解説した一種の歴史書である。著者は、最近にわかに脚光を浴びている感染症の専門家ではなく、アフリカ、南米、東南アジア等で長く活躍した記者であり、「マラリア四回、コレラ、デング熱、アメーバ赤痢、リーシマニア症、ダニ発疹熱各一回、原因不明の高熱と下痢数回・・・」の病歴をもつ強者である。環境問題に携わってきた人でもあり、広い視点から書かれていて、文系の自分にも分かりやすい。

目に見えぬウイルスが世界を変えてきた

   コレラ、ペスト、エイズ、エボラ出血熱、風疹・麻疹(はしか)、ピロリ菌、スペイン風邪、インフルエンザと、個々の病気について多少なりとも知識を持ち合わせていたつもりでいたが、本書には、これらを「感染症」として、人類との関わりを体系的に見る面白さがある。

   新型コロナウイルスの猛威に直面して未知との闘いが強調されるが、人類はこれまで何度も未知のウイルスと戦い、そして、生き残り、発展してきたのである。その過程では、東西交流の拡大や農業改革に伴う中世のペスト流行(7500万人~2億人)、二度の世界大戦間にその死者を超える8000万人の死者を出したとされるスペイン風邪といった悲劇を起こしている。また、南米の新大陸発見では、天然痘などの流行が現地文明を崩壊させてしまった。歴史上の誰もが知る英雄より、目に見えぬウイルスが世界を変えてきたのだ。歴史書にはメインテーマとして書かれることはないが、人類の歴史は、感染症抜きには語れないといっても、過言ではない。また、最近の遺伝子研究により、人類、そして、日本人のルーツの解明にも一役買っている。

感染症との闘いは続く

   科学の発展により原因の究明と治療薬やワクチンの開発は進み、また、衛生環境も良くなっているが、どうも、未来に向かっても、感染症との闘いは続くらしい。人類の進化と同時に、ウイルスも薬剤に対する耐性を獲得し、強い毒性を持つなど進化を遂げているのだ。さらに、人口増加と交流の増大、未開発地域への開発は、新たな感染症の発生要因になる。その意味で、本書は2014年に執筆された本であるが、現在のコロナ・ショックを予言していた。想定外の事態ではないのだ。

   今回の新型コロナウイルスを短期間で克服しても、恐らく10年後に、新たなウイルスに対峙することになるだろう。日本は、14億人の人口を抱え、衛生状態も決して良くない国を隣国とし、国際交流を閉ざすこともできない。ウイルスと持続的に付き合い、その影響をコントロールしていける体制と生活スタイルが求められているように思う。

   緊急事態宣言が延長され、自宅にいる時間が長くなった。この時間も楽しめるようにしていくことも大事だと思う。家庭を大切にするとともに、自己研鑽の機会としたい。本を読む時間を増やそう。

経済官庁 吉右衛門

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