2020年 10月 26日 (月)

フルホン魂 嵐山光三郎さんの古書愛はコロナ禍にもくじけない

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   週刊朝日(5月8日・15日合併号)の「コンセント抜いたか」で、嵐山光三郎さんが古本と古書店への愛を語っている。題して「フルホン魂」ときた。

「新刊書店へは行ってもいいが古書店はダメ、というおふれが出た。古寺巡礼と古書店廻りは人間再生の浄化装置なんですよ。本を読まない連中が決めるから、こうなる」

   この冒頭には、若干の解説が必要だろう。新型コロナの感染を抑えるため、東京都は4月半ば、休業をお願いする業種の詳細を発表した。線引きの基準は〈生活上、必要不可欠かどうか〉である。一般書店は「学習参考書なども扱い、現在の情報を入手できる場所」として外される一方、古本屋は「趣味的な要素が強い」との理由で事実上の休業令が下った。

「一冊の本が何人かの読書家の手をへて店頭に並び、ようやく自分の番がきたという思い。古本がつなぐ精神のリレーは、新刊書とは異次元の気魄があるんだよ。先人が読んだ余熱が活字の上に漂っている...古本屋は、こういった精神のリレーを仲介する業者である」

   書き手である前にプロの読み手である嵐山さんらしく、静かな怒りがにじむ。

「古書店にはフシギな静けさと香りがあり、活字の威厳が漂っている。誘惑の甍(いらか)である。薄暗く濃密な書棚の陶酔。新刊書店は甘味がとろける本の花壇だが、古書店はひとつ奥にある秘密の森である」
  • 大型連休中もひっそりしていた神田の古書店街=冨永写す
    大型連休中もひっそりしていた神田の古書店街=冨永写す
  • 大型連休中もひっそりしていた神田の古書店街=冨永写す

昔の恋人に再会して

   古本は古い時代から降って来る「降る本」でもあって、人の心の池に飛びこむ活字の音がするという筆者。遠慮がちに鉛筆で薄く引かれた傍線の味、気難しい店主との交わりなどの体験談が面白い。有名な神田の古書店街は、都心の一等地という立地がアダになり地上げ攻勢で荒廃したが、老舗の跡取りたちの奮闘で再生したことも紹介される。

「それは古本ファンと古書店主が一体化してなしとげられた...日本が世界遺産として誇っていいのは、じつに神田の古本街なのである。神田古書店街がよみがえったことにより、青山、渋谷、高田馬場、中野、荻窪、吉祥寺の古書店も活気をとり戻した」

   業界仲間と目利きぶりを競う「古本買い勝負」、その後の居酒屋での合評会の話、やはり古本好きだった「頑迷固陋」の父上の思い出も楽しい。「還暦を過ぎたころから、偏屈の気分がわかるようになった...過ぎ去った時間の影を見つめていたのだ。古本の快楽」

   読書家の嵐山さんは蔵書がかさみ、年に一度はなじみの古本屋が引き取りに来るそうだ。未読の本を含めて書棚ごとまとめ買いしてもらい、空きスペースを見て安心する。これを繰り返すと、書棚には辞典、地図帳、年鑑、図鑑ばかりがたまっていくという。これは私もわかる。何か書く時に参考になりそうな本は、たいてい書棚で長生きする。

「古書店へ行くと、売ってしまった本に出会うことがある。すると昔の恋人に再会したトキメキで、また買ってしまう。ヨリが戻った」

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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