2024年 4月 20日 (土)

自民党・岸田文雄新総裁の愛読書 長く非公開だった外交にまつわる記録

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   自民党の新総裁に決まった岸田文雄氏の愛読書は、ドストエフスキー『罪と罰』、吉川英治『宮本武蔵』、陸奥宗光『蹇々録』(けんけんろく』だという。日経新聞が報じている。『罪と罰』や『宮本武蔵』は有名だが、『蹇々録』は初めて聞いたという人が多いのではないだろうか。どんな本なのだろう。

  • ジョルジュ・ビゴーによる当時の風刺画(1887年) 日本と中国(清)が互いに釣って捕らえようとしている魚(朝鮮)をロシアも狙っている。(パブリックドメイン)
    ジョルジュ・ビゴーによる当時の風刺画(1887年) 日本と中国(清)が互いに釣って捕らえようとしている魚(朝鮮)をロシアも狙っている。(パブリックドメイン)
  • ジョルジュ・ビゴーによる当時の風刺画(1887年) 日本と中国(清)が互いに釣って捕らえようとしている魚(朝鮮)をロシアも狙っている。(パブリックドメイン)

易経からタイトル

   著者の陸奥宗光(1844~97)は歴史の教科書には必ず出てくる人だ。明治期の外交官、政治家。外務大臣として不平等条約の改正に尽力したことで知られる。

   『蹇々録』は、晩年の陸奥が残した外交にまつわる記録だ。機密性の高い外交文書をもとにしているので、長く非公開とされ、1929年に初めて公刊された。明治外交史上の第一級史料だという。

   今では、岩波文庫や中公クラシックスで読むことができる。中公クラシックスは、単に『蹇々録』というタイトルだが、岩波文庫版は『新訂 蹇蹇録―日清戦争外交秘録 』。サブタイトルに「日清戦争」が付いている。

   岩波文庫によると、同書は日清戦争(1894~95)における日本外交の全容を述べた、当時の外務大臣=陸奥宗光の回想録。表題は、「蹇蹇匪躬」(心身を労し、全力を尽して君主に仕える意)という『易経』の言葉によるという。

日本の国益のための戦争

   同書には1894(明治27)年に朝鮮で起きた甲午農民戦争(東学党の乱)から、95(明治28)年の三国干渉までの陸奥宗光自身の外交の経験・苦労・感想が書かれている。たとえば、94(明治27)年の日清戦争開戦の動機については、内村鑑三は当初、中国の不当な朝鮮支配を打破するための義戦であると唱え、日本の世論もだいたいにおいてこれに一致していたが、『蹇々録』にははっきりと日本の国益のための戦争であって義侠の精神はまったくないと書かれているという。

   岸田氏は2012年12月から17年8月まで5年近く外務大臣としていた。韓国との慰安婦問題の処理にもあたっている。日韓関係のこじれの淵源を、大先輩の外務大臣の著作を通して学びなおしていたのかもしれない。

   岸田氏の愛読書が『蹇々録』だということについては、改めてスポットが当たることもありそうだ。

「宮本武蔵」に国民は熱狂

   他の二冊の愛読書のうち、『罪と罰』はあまりにも有名。『宮本武蔵』は今も大人気の宮本武蔵のスーパースターぶりを定着させた剣豪小説として知られる。

   戦前、1年間の予定で朝日新聞に連載されたが、読者からの大反響で連載が延々と続き、4年に及んだと言われている。新聞小説の歴史の中では空前の大ヒット作品として知られる。この間に朝日新聞は部数を大きく伸ばしたという。ちょうど日中戦争が拡大していく時期でもあり、闘いに挑む武蔵の姿に多くの読者は手に汗を握った。

   ちなみに今回、決選投票で敗れた河野太郎氏の愛読書は、ダ・ヴィンチ・ニュースによると、海洋冒険を描いた児童文学『ツバメ号とアマゾン号』(アーサー・ランサム作、神宮輝夫:訳/岩波書店)。河野氏は幼い頃から「ツバメ号」シリーズの大ファンで、全巻揃えているのだという。

   退陣する菅義偉首相の愛読書は、日経新聞によると、マキャベリの『君主論』、堺屋太一氏の小説『豊臣秀長 ある補佐役の生涯』、米国の元国務長官であるコリン・パウエル氏の著書『リーダーを目指す人の心得』だ。それぞれの本が、期せずして菅氏の人生と重なっている。

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