2024年 4月 26日 (金)

「ぼくたちの失敗」森田童子さんの「謎」 作家なかにし礼さん「遺作」で明かす?

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   「謎の歌手」と言われた森田童子さんについて、新しい情報が話題になっている。作家・作詞家のなかにし礼さんの遺作『血の歌』(毎日新聞出版)の中に、森田さんと思われる人物が登場し、生い立ちなどが詳しく記されているからだ。二人はいったいどんな関係だったのか。

  • 森田童子「GOOD BYE グッドバイ」
    森田童子「GOOD BYE グッドバイ」
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ブレイクしても沈黙守る

   森田さんは1952年生まれのシンガーソングライター。75年に「さよならぼくのともだち」でデビュー。全国各地の小さなライブハウスやテント公演などで歌い、若い世代を中心に一部で熱狂的な人気を誇った。青春の挫折を色濃く投影した歌詞と、透明感のある歌声が特徴だった。しかし83年、新宿ロフト公演を最後に、時代に背を向けるかのようにひっそりと音楽活動を閉じた。

   再びスポットが当たったのは93年、テレビドラマ「高校教師」に作品が使われたのがきっかけだ。再発売されたシングル「ぼくたちの失敗」は100万枚に迫るビッグヒットになり、アルバムも再リリースされるなどブレイクした。しかし、森田さんは沈黙を守り、マスコミの前には現れなかった。そして2018年4月に亡くなっていたことが、日本音楽著作権協会(JASRAC)の会報に「訃報」が掲載されたことで分かった。

   なかにし礼さんは1938年、中国黒竜江省(旧満州)牡丹江市生まれ。立教大仏文科在学中からシャンソンの訳詩などを手がけ、その後、作詞家として「天使の誘惑」、「石狩挽歌」、「今日でお別れ」、「北酒場」など多数のヒット曲を生み出した。日本レコード大賞日本作詞大賞など多くの音楽賞を受賞している。作家としても活躍し、2000年には『長崎ぶらぶら節』で直木賞を受賞した。ドラマ化された『兄弟』『赤い月』などでも知られる。2020年12月に亡くなった。

「謎の歌手」は「森谷王子」

   『血の歌』は、原稿用紙で約60枚。なかにしさんが亡くなった後、別荘の机の引き出しから見つかった。執筆は1995年と推定されている。息子で音楽プロデゥーサーの中西康夫さんによると、代表作『兄弟』の習作として書かれたものだという。「父の兄と、その子である『謎の歌手』との葛藤に満ちた関係が、時代背景とともに濃密に描かれていて、これは発表に値する作品ではないかと考えた」と同書のあとがきで記している。2021年12月、なかにしさんの1周忌を機に遺族の手で刊行された。

   『血の歌』は、なかにしさんの兄、中西正一さんが主人公になっている。物語は、「謎の歌手、森谷王子は私の娘なのです。私の二番目の娘、美納子なのです」という兄の独白で始まる。

   「森谷王子は今年になってにわかに脚光を浴びた。王子の歌う『ぼくの失敗』という歌が、テレビの金曜ドラマ『教師の恋』の主題歌に採用され、番組の高視聴率とともに、王子の歌も爆発的に売れはじめた」と説明されている。

   「森谷王子」の風貌についても描かれている。「絶対に素顔を見せまいとする意志をしめす真っ黒なサングラスに、雌獅子のようなカーリーヘアー」。これは、森田さんのレコードジャケット写真とそっくりの描写だ。

   このほか、「八年間歌って、森谷王子はふっつりと姿を消した」など、誰が読んでも、「森谷王子」は「森田童子」のことだなと直感する内容だ。実際、同書の表紙には森田さんのモノクロ写真がデザインされている。

一時は同居していた

   なかにしさんは、『血の歌』で、「弟の礼三」「作詞家なかにし礼」として登場する。兄との関係は代表作『兄弟』でもテーマにしていた。

   『血の歌』では、兄は戦時中、戦闘機のパイロットで、米軍のB29の大編隊と50回も空中戦を交えて生き残った、という設定だ。戦後は何度も事業に失敗。女性関係も奔放で家族を困らせた。若くして作詞家として大成功したなかにしさんが、兄の借金を肩代わりし、東京・中野に大きな家を建てたときは、兄一家が同居していたと記す。

   なかにしさんは、兄の次女「美納子」と波長が合い、かわいがっていたという。しばしば肩をもんでもらったりもしていた。『血の歌』では、「叔父さんの七光りで世に出たくない」という「美納子の希望」についても触れられている。

   森田さんのデビューを担当した女性プロデューサーは、なかにしさんに初めて歌謡曲を書かせた人だった。いわば「作詞家なかにし礼」の生みの親だ。彼女も同書に登場し、「森谷王子が、なかにし礼の姪ってことを当分は伏せておきたいの」と語っている。

   なかにしさんと森田さんの関係については、これまでも一部のファンの間で噂になっていた。しかし、なかにしさんは生前、何も語らないまま亡くなった。

   『血の歌』の刊行後は、なかにしさんや森田さんと接点があった人も含めて、多数の人がそれぞれの思いをインターネットなどで語っている。

   3月末に発売された雑誌「女性自身」(22年4月7・14日号)は、まったく別な話として「森田童子さん『評伝本』がお蔵入りトラブル」という記事を掲載している。その中で、「謎に包まれた森田さんの正体を明かしたのは、昨年12月、作詞家のなかにし礼さん(享年82)の没後1年に出版された遺作『血の歌』(毎日新聞出版)だった」と書いている。

   J-CASTトレンドでは2016年に「『伝説の歌手』森田童子よみがえる 最新リマスターCDや『全曲集』、36年前の『お宝動画』も」という記事を公開済みだ。

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