2022年 9月 25日 (日)

「AI茂木健一郎」の「ニーチェみ」が増す 「きみとロボット」展が面白い

モータースポーツの世界観を表現した『ECB-2000』
【J子が行く】J-CASTトレンド記者「J子」とその同僚たちが、体を張って「やってみた、食べてみた、行ってみた」をリポートします。

   日本科学未来館(東京都江東区)では、日本中のロボットが集結する特別展「きみとロボット ニンゲンッテ、ナンダ?」を2022年8月31日まで開催している。

   人間を補助するロボットや、人格を再現したAI(人工知能)の展示を通して、「人間とはなにか」を考える。単純に、「最新のロボットに触れられるのは楽しそう!」――そう考えた僕こと「J太」は東京・お台場エリアに向かった。

  • 日本科学未来館で特別展「きみとロボット ニンゲンッテ、ナンダ?」を開催中
    日本科学未来館で特別展「きみとロボット ニンゲンッテ、ナンダ?」を開催中
  • 日本科学未来館で特別展「きみとロボット ニンゲンッテ、ナンダ?」を開催中

まずはロボットの歴史

   案内してくれるのは、日本科学未来館の「科学コミュニケーター」・宮田龍さん。「科学コミュニケーター」とは、最新の科学技術の情報を世に伝えたり、研究者と交流できる場を作ったりする仕事だ。

   「きみとロボット」は、大きく3つのゾーンで構成される。「Zone1」は、「ロボットって、なんだ?」がテーマで、過去から現在までの人間とロボットの歴史を紹介している。

   壁には紀元前から年代順に、各時代のロボットの歴史が詰め込まれている。ロボットを扱ったフィクション作品が、実際の研究者のインスピレーションにつながることもあるそうで、さまざまなSF作品のタイトルも紹介されている。「展示のコンセプトにあわせて、どのロボットや作品を選ぶかの準備がとても大変でした」と展示作業を振り返る宮田さん。「新世紀エヴァンゲリオン」など、見知ったアニメの名前もあった。

年代でわかる、人とロボットの歩み
年代でわかる、人とロボットの歩み

   各時代を代表するロボットの実物も飾られている。早稲田大学ヒューマノイド研究所が1973年に開発した、世界初の人型知能ロボットという「WABOT-1」や、二足歩行ロボット「ASIMO」(2000年)など、名だたるロボットがずらり。世界初の「感情」を持つ人型ロボット、ソフトバンクロボティクスの「Pepper」(2014年)もいた。

初の「感情」を持ったロボットだ
初の「感情」を持ったロボットだ

巨大ロボットの視界を体験

   「Zone2」は、「きみって、なんだ? にんげんってなんだ?」が主題で、3つのエリアがある。「Zone2-1:からだって、なんだ?」は、人間の機能を拡張できるロボットなどを通して、身体について考えるゾーンだ。義手と楽器を合体させ、腕をギターなどに変えられる「Musiarm」など、見たことのない機械が目に入る。

   ひときわ際立つロボットがある。人型重機の「零式人機(れいしきじんき)Ver.1.2」だ。鉄道整備など、高所の重作業に役立つロボットだ。

   来場者が腕を操作することはできない。が、頭を覆うようなディスプレーを装着し、ロボットの視点から会場を見まわせる体験コーナーがある。

   こうした人間が遠隔で操作し、自身の分身として用いるロボットは「アバターロボット」と呼ばれるらしい。宮田さんによると、「アバターロボットをどこまで自分の体ととらえられるかを考えてもらうため」の展示だ。零式人機の体験については、

宮田さん「僕は高所恐怖症なので、ロボット目線で下をのぞき込んだときの高さが怖かったです」

そう言われると少しドキドキしてきたが、体験せずにはいられない。

   体験コーナーの係員の誘導に従い、ディスプレーを着ける。会場内が視界に飛び込んでくると、

J太、「うわ、空中にワープした!」
ディスプレーを頭につけ、巨大ロボの視界を体験
ディスプレーを頭につけ、巨大ロボの視界を体験

   視点の高さは3~4メートル。自分の首をゆっくりと振ると、零式人機の頭部もその動きに合わせてくれて、思い通りに会場を見まわせる。巨大ロボに「憑依(ひょうい)」している状態だが、自分の体は別の位置にいるから奇妙な感覚だ。小さくなった宮田さんが、零式人機に手を振ってくる。やっほー。

夏目漱石、美空ひばりが

   「Zone2-2」は「こころって、なんだ?」がテーマ。ロボットと触れ合うことで芽生える思いや感情を通して、人間の「こころ」について考える場だ。ソニーグループの「aibo」といったペット型のロボットが目につく。

    こちらから手を出さないと「消毒液を噴出する」といった役割を果たせない「iBones」は、印象的だ。「人間が補助する」を前提としたロボット。見た目からして弱々しく、思わず助けてあげたくなる。こちらは宮田さんの「お気に入り」らしい。

人間が手助けするロボット「iBones」
人間が手助けするロボット「iBones」

   「Zone2-3:いのちって、なんだ?」。夏目漱石そっくりの見た目をしたアンドロイドや、故・美空ひばり氏の歌唱を再現できるAIなど、「いのち」について考えさせられる展示が並ぶ。

   19世紀のドイツの哲学者、フリードリヒ・ニーチェを模したAIもある。隣にはなぜか、脳科学者の茂木健一郎氏を再現したAIを設置。両者の発言は互いにリンクしており、ひたすら小難しい会話を続けている。こうした個人の考え方や価値観を再現したAIは「デジタルクローン」と呼ばれることが多いという。

茂木健一郎氏(左)とニーチェを再現したAI
茂木健一郎氏(左)とニーチェを再現したAI

デジタルクローンの驚きの変化

   来館者は、茂木氏のデジタルクローンに話しかけて質問できる。宮田さんによると、茂木氏のクローンは会話しているうちにニーチェの発言を学習し、閉館に近づくにつれなんと会話内容が変化するらしい。会館時間の朝10時ごろのやり取りの映像を見せてくれた。

宮田さん「今日のお昼ご飯は何を食べますか」
茂木氏(AI)「学校が終わってから外で食べるか、家で食べようと思います」

   そして現在、J太がいる16時ごろ。改めて同じ質問をすると...。

宮田さん「お昼ご飯は何を食べますか」
茂木氏(AI)「今日は、外で食べようかと思ってる。私は、尊厳の死は、やさしい問題だと考えている。身体が自由なのならば、そのような死も、それなりに尊重されるべきだからだ。身体が自由だと、自分が死ぬということが、他人事のように思われるわけ」

   なるほど、影響を受けているのは明らかだ。食事の行き先の話をしているかと思いきや、次の瞬間流れるように哲学。そんなニーチェからAI茂木氏が学習した内容は、毎日リセットされている。また明日の朝には素の状態にもどっているのだろう。

右の文字列が茂木氏のデジタルクローンの発言
右の文字列が茂木氏のデジタルクローンの発言

人とロボットの未来は

   最後の「Zone3」は「きみとロボットの未来って、なんだ?」がテーマ。この先、あり得るかもしれないロボットと人間の未来について考えるコーナーだ。特撮監督・樋口真嗣氏やバーチャルアイドルユニット「Holographic」など、各分野で活躍している人物のコメントが「未来へのてがかり」として紹介されている。

   壁面の文字やコーナー内のディスプレーの映像では、さまざまな未来の可能性が描かれる。「ペットロボットが我が家にやってきた」が「ペットとの会話がSNSで拡散」してしまう、「デジタルクローン」として生まれ変わったが「それって『本当の私?』」という疑問が生まれる...など、考えさせられる内容が詰まっている。

   ロボットの歴史や人間のあり方、そして未来を体感できる展示だった。

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