2024年 4月 25日 (木)

ウクライナ戦争で世界の構造が変わった 「第3のグループ」に存在感

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   ロシアのウクライナへの軍事侵攻で、世界の枠組みが変わったという指摘が目立っている。世界は、「欧米」vs「ロシア・中国」という単純な「2極構造」ではなく、どちらにも属さない「第三のグループ」の存在感が増しており、その結果、「3極構造」が鮮明になっているという。

  • 世界平和への道のりは遠いのか
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にわかに重要性が増した

   「3極構造」を早い時期に指摘したのは、英王立国際問題研究所所長のロビン・ニブレット氏だ。ロシアのウクライナ侵攻からまもない22年3月26日、読売新聞に「世界の3極化 より鮮明に」と寄稿した。

   同氏によれば、第1のグループは米英仏独と日本など先進7か国(G7)を中心とする自由民主主義の国々。

   第2のグループは中国とロシアを中心に、シリア、イラン、北朝鮮、ベネズエラなどを加えた独裁政治体制の国々。

   そして第3のグループとして、中東、アフリカと中南米の大半、ベトナム、インドネシアなど、民主主義陣営と独裁陣営のどちらにも属さず、所属したいとも思っていない国々を挙げた。

   第1、第2の陣営は、第3のグループを自陣に取り込もうと競い合うことになるとし、「第三グループにとってはいいことだ。にわかに自分たちの重要性が増したと感じ、三つのグループの三角形の中でうまく立ち回ろうとするだろう」と予測した。

「制裁」に踏み切った国はわずか

   さらに詳しい分析は、シンガポールの元駐米大使で、政治学者のチャン・ヘンチー氏が6月9日の日経新聞で語っていた。

   ロシアのウクライナ侵攻に対する国連総会の非難決議には141か国が賛成したが、ロシアへの制裁に踏み切ったのは、欧米やその同盟国を除くと、わずかにすぎないことに着目。「アジアや中南米、アフリカの大半の国は制裁に同調していない。この状況がウクライナ侵攻後の世界の新たな秩序を表している」と、以下のように分析した。

・世界の大半の国は米国・欧州、中国・ロシアのいずれの陣営にも完全にくみしない「第3の空間」に属することを望んでいる。自国の国益を第一に考え、ある問題では米国の立場に賛同し、別の問題では中ロに近い立場を取ることを矛盾だと考えない。
・例えば日米豪と共に「Quad(クアッド)」の一員であるインドは中国に関して3か国と歩調を合わせるが、それ以外の問題では独自の立場を譲らない。実際、ロシアとの軍事面での協力関係の深さから、ウクライナ侵攻を非難せずに中立姿勢を保っている。
・東南アジア諸国連合(ASEAN)は民主主義、疑似民主主義、共産主義、社会主義、国軍による支配と多様な政治体制の集合体だ。民主主義は地域を導く旗印にはならない。

「中立」が32%

   岸田文雄首相は常に、同盟国と共に、「自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的な価値を守り抜く覚悟」を強調している。日本人の多くも、欧米との連携を基調に、「欧米vs中ロ」という「2極」で国際情勢を判断することに慣れている。

   しかし、日本の学者の中にも、そうした見方に対し、距離を置く人が出始めている。

   神奈川大学経済学部教授の的場昭弘氏は、6月24日の東洋経済オンラインで、日欧米以外の国々の動向にも注意するよう提起した。

「今回のロシアのウクライナ侵攻に対して、意外と多くの国々がロシアの方を支援していることに、日本人は気づくべきかもしれない。積極的な支持から消極的な支持とさまざまだが、注目すべきはEUと日本、アメリカ、そしてその関係国を除く多くの国がその中に含まれることだ」

   同氏によれば、アフリカ諸国は、ウクライナへのロシアの侵攻を是認しているわけではない。むしろ非難しているのだが、それは米国のイラク侵攻が許されているのに、ロシアだけがことさら批判されることへの暗黙の抗議でもあり、いわゆる国連のダブルスタンダードへの批判だという。

   6月28日の日経新聞では、同紙コメンテーターの秋田浩之氏が、「そして3極に割れた世界」との見方を長文の論考で提示した。

   同氏によれば、世界の人口比で見ると、ロシアのウクライナ侵略を非難したり、制裁したりしている国々は、西側諸国を中心に36%に過ぎない。32%は中立を決め込む国々、残る32%はロシアの主張を理解するか、支持する国々だという。

   「バイデン大統領をはじめとする西側のリーダーは、世界が対ロシアで結束してると主張する。しかし、実態は逆なのだ」「日本としてはまず、旧秩序に慣れ切った頭を切り替えることが第一歩になる」と書いていた。

共同声明が出せない

   7月8日に閉幕した?20か国・地域(??G20??)外相会合では、米欧とロシアが激しく対立、共同声明の発表は前回4月会合に続いて見送られた。朝日新聞によると、参加国のうち9か国がどちらの陣営にも属さない第3のグループだった。産経新聞によると、インドなど8か国はロシアに対する経済制裁を支持しなかった。この8か国のうち6か国はロシア非難決議を支持したが、インドと南アフリカは棄権した。

   G7(米、英、仏、独、伊、カナダ、日本)では論議がまとまることが多いが、そこに、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、韓国、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、欧州連合・欧州中央銀行を加えた20か国・地域によるG20、さらに多くの国々が加盟する国連の会合になると、ロシアのウクライナ侵攻後は、これまで以上に世界の分裂ぶりが鮮明になっている。

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