日本初「事故車・故障車・廃車専門」オークション 立上げ人、苦い経験ばねに「公平な取引」目指す

   日本で初めて事故車・故障車・廃車に特化したオークションサイト「LiNQAR direct auction(リンカー ダイレクト オークション)」(以下、「LDA」と記述)は2016年10月3日、Android 端末向けのアプリの運用を開始した。

   2009年、ITの活用で新しいサービスを提供するイードリーマーが立上げた同サイトは、大手損害保険会社やオートリース会社等が所有する事故車両などを出品し、会員登録した自動車修理業者や自動車解体業者に落札されるビジネスモデルを展開する。2016年には、取引企業をすべての自動車関連業者に拡大し、年間流通台数は2万台以上、会員登録企業数は3810社(2016年11月末)。毎年平均して180%強の伸張率を誇っている。

   イードリーマーの代表取締役社長・山下亮氏(43)が事故車・故障車・廃車専門のオークションサイトを設立したのは、若い頃に味わった苦い思い出がきっかけだったという。

イードリーマーの代表取締役社長・山下亮氏
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「少しでも多くの金額を還元したい」

   「LDA」は2009年10月、日本で唯一の事故車・故障車・廃車に特化するオークションサイトとして誕生した。1年365日、休むことなく開催されているオークションには、スマートフォンで撮影して送るだけで、いつでも気軽に出品できる。出品料は掛からず、物流費用も発生しないので、支払いは成約時の手数料のみ。日本最大級の車両引き取りネットワークを擁し、全国各地どこへでも陸送で輸送できる。

   イードリーマーの代表取締役社長を務める山下亮氏は、金融機関や貿易関連企業などの営業職を経た後、自動車業界に商機を見つけて2008年に起業した。「LDA」を立上げるきっかけとなったのは、20歳の頃にローンで購入した愛車を事故で壊し、やむを得ず車両を売却して安く買い取られた経験だ。

「事故車両の相場や流通経路は複雑で、一般にはほとんど開示されていません。今までの流通経路だと事故を起こして車両を売却する人は、事故車買取業者へ売却するしかありませんでした。そのため言い値で安く買い取られてしまうことがほとんどです。そして、事故車を買い取った業者は車両をリアルオークションに出品するため結果として仲介業者が多く存在してしまい、手数料が上乗せされていき公正な取引が難しいのが現実でした。また、事故車はその状態により値段が違うため、相場はわかりにくいものでした」(プレスリリースより)

   「自分と同じように事故をして困っている人に少しでも多くの金額を還元したい」という思いが根底にあったという。

「LDA」はどう広まったのか

   インターネットがあれば、買い取り業者を介さず事故車を売却できるので、透明性の高い価格提示を担保できる。それまで1台約3万円で買い取られていた事故車が、約10万円で売れたこともあるほどだ。立ち上げ当初、大手損害保険会社に説明しに行くと、すぐに導入を決めてくれた。落札者が部品買い取りの業者に電話で説明するなど、以降は営業活動をせずとも、口伝えで拡散したという。

「当社では社内にシステムエンジニアがいるため、ユーザーのニーズによって臨機応変にサイトを作りかえることが可能ですが、他社はすべてITの知識がない自動車買取業者のため、外注するにも費用がかさんでしまいます」(プレスリリースより)

   そのため競合サイトはないまま、規模拡大が進んだ。2016年8月、「LDA」はリニューアルし、スマートフォンのアプリで出品できる仕組みが整備された。

   山下氏の「困っている人に還元したい」という思いは見事に実を結んだといえる。ユーザーは適正価格で取引できるようになり、中間マージンを抜くような買い取り業者もいずれいなくなり、公正な取引に近づくだろうと、山下氏は見込む。

「『知っててよかったを、世界に。』をスローガンに掲げ、当社でなければできない、知っててよかった世界をお届けするための新しいサービスの創出に尽力しております」

   イードリーマーのホームページでは、社長あいさつとして、こう宣言している。

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