ビフィズス菌に認知機能改善の可能性 27人を対象に検証

   腸と脳は自律神経で強く結ばれており、互いに影響し合う。つまり、腸内環境を良好な状態に維持することは、脳機能によい影響を与える可能性があると考えられる。

   森永乳業は、ヒトの腸内にすんでいて、身体に良い影響を及ぼす「善玉菌」の代表と知られる「ビフィズス菌」に着目して研究を進めてきた。2018年3月15~18日開催の「日本農芸化学会2018年度大会」では、「ビフィズス菌A1」が、軽度認知障害が疑われるヒトの認知機能を改善する可能性があることを発表した。

互いに影響を与え合う「腸」と「脳」 (画像はイメージ)
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密接に関連している腸と脳

   近年、腸内細菌と健康が密接に関連していることが明らかとなってきており、腸内細菌を含めた腸と脳の機能の関わり合いを意味する「脳腸相関」が注目されている。

   腸内細菌のうち、「善玉菌」の代表「ビフィズス菌」の研究を長年続けているのが森永乳業だ。2018年1月末、ビフィズス菌A1にアルツハイマー型認知症の発症を抑える可能性があることを、東京都内で開催したセミナーで発表した。(参考:アルツハイマー型認知症の発症抑制に光 「ビフィズス菌A1」実験で成果

   同セミナーでは、ビフィズス菌A1を投与したアルツハイマー病モデルマウスが、認知症への処方薬を投与された場合と同程度の改善効果を示したという試験結果が発表されたが、ヒトへの研究結果は後日学会で発表するとしていた。

   そして3月15~18日、名古屋で開催された「日本農芸化学会2018年度大会」で、ヒトでの検証結果が発表された。

「ミニメンタルステート検査」で認知機能が改善

   森永乳業は、認知症を発症する前段階である軽度認知障害が疑われる被験者27人を対象として、ビフィズス菌A1を摂取する前と後の比較試験を実施。被験者はビフィズス菌A1を100億個含有するカプセルを1日2個摂取した。

   摂取前及び8週後、24週後に「ミニメンタルステート検査」(MMSE)によって認知機能評価を行った。MMSEとは、認知機能を比較的簡便に評価できる聞き取り式質問票のことで、認知症のスクリーニングや診断の補助として広く活用されている。得点が低いほど認知機能障害を有する可能性が高いとされており、本研究では22点~26点を「軽度認知障害の疑いがある」と評価した。

   摂取前に平均24.3点だった被験者のMMSEスコアは徐々に上がっていき、8週には26.1点、24週には27.0点と改善していった。以上のことから、ビフィズス菌A1の継続摂取により軽度認知障害が疑われる被験者(ヒト)の認知機能改善に関する可能性が示された。

   森永乳業は、今後はビフィズス菌A1を摂取した被験者と、プラセボ(有効成分を含まない、いわゆる偽薬)を摂取した被験者を比較する試験などを継続的に行い、引き続きビフィズス菌A1の有効性を検証していくという。

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