「サル痘」日本でついに感染者 根絶した「天然痘」が治療のカギに

   世界的に「サル痘」の感染者が急増している。日本でも2022年7月26日、初めて感染者が確認された。

   その結果、「天然痘」についての関心が高まっている。サル痘と天然痘は、別の病気だが、体に発疹ができるなど症状に似ているところがある。しかも、サル痘の予防には、天然痘のワクチンが効くとされているからだ。

天然痘のワクチンが有効だという(写真はイメージ)
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人類を最も大量に殺害した感染症

   天然痘は、天然痘ウイルスによる感染症だ。紀元前1万年以上前から地球上に何度も出現してきた。致死率が極めて高く、人類を最も大量に殺害した感染症として知られる。英国の医師ジェンナーによって、19世紀末に世界初のワクチン、天然痘ワクチンの「種痘」が開発され、各国で実施されたことにより、1980年にはWHO(世界保健機関)が根絶を宣言した。

   それ以前の段階では、日本でも幼少時に種痘を受けることが普通だった。『感染症の近代史』によると、明治天皇も江戸時代末期の幼少時に、蘭方医による種痘を受けている。

   近年、日本では種痘は行われていないので、今や免疫を持っている人はほとんどいない。

   サル痘は最近発見された病気ではない。1950年代にアアフリカで見つかり、すでに一定の対応策が講じられている。したがって今回、世界的に拡大した段階で、天然痘のワクチンが有効だということが公表されてきた。時事通信によると、欧州連合(EU)欧州委員会は7月25日、天然痘ワクチンをサル痘予防用として使用することを承認した。

   このように、サル痘には効果的なワクチンがあり、また治療薬も承認済みだということが、新型コロナウイルスの初動期とは大きく異なっている。

リスなどが自然宿主

   加えて、サル痘は、新型コロナウイルスのような急拡大の恐れもないとされている。

   WHOによると、「サル痘」は7月23日時点で、75の国と地域で1万6000人の感染が確認されている。しかし、サル痘感染者の98%超は男性で、ほとんどの症例が、男性と性交渉することを自身で認識している男性の間で発生しているという特殊性がある。

   ANNニュースで26日、サル痘に詳しい岡山理科大の森川茂教授は、「コロナのようには広がらないと思うので、1人の患者さんが出たので非常に危険だというレベルにはなっていません。コロナのように飛沫(ひまつ)で感染するのではなく、かなり近い距離でくしゃみのつばきを直接、浴びるくらいの浴び方をしないと感染しない」と説明している。

   毎日新聞によると、天然痘ワクチンは現在、効果を調べる臨床研究として接種したり、医療従事者に事前に接種したりできるという。現在の感染状況では国民が広く接種する状況ではないようだ。

   サル痘は、主にアフリカ大陸に生息するリスなどのげっ歯類が自然宿主とされている。感染した動物に噛まれたり、感染した動物の血液、体液、皮膚病変(発疹部位)と接触したりすることでも感染するとされている。

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