「ナメクジ騒動」並み食の不安は北京でも 賞味期限改ざん、真っ黒な油

   中華料理チェーン「大阪王将」のナメクジ騒動が世間を騒がせているが、中国・北京でもグローバル飲食チェーンの不衛生な店舗経営が大炎上している。

   現地メディアの記者が「ピザハット」にアルバイト店員として潜入し、マネジャーが食材の賞味期限を改ざんする現場や真っ黒に汚れた調理油の証拠を押さえ、報道したのだ。

「新京報」が報じた告発動画より。真っ黒に汚れた調理油とみられるもの
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透明だった食用油が墨汁のように

   新京報の7月20日付記事によると、従業員から内部情報の提供を受けた記者が、北京市内の2店舗にアルバイト店員として潜入。2週間にわたって実態を調査した。その結果、以下のような事実が判明した。

・倉庫の棚にあったブラックペッパーステーキ1袋と背開きアメリカザリガニ1袋の賞味期限ラベルは、当初6月20日と記載されていた。記者が同日、数時間目を離している間にザリガニの賞味期限は21日に、ステーキの賞味期限は22日に変更されていた。
・チャーハンとパスタの材料として6月19日に調理されたごはんとゆでパスタの廃棄期限が、本来は翌20日であるのに21日に改ざんされ、同日も客に提供された。
・記者とベテラン社員が6月19日に交換した調理油が24日まで使い続けられ、透明だった食用油が墨汁のように黒く変色した。その後、新しい油を足してさらに5日間使い続けた。

   これらは記事で指摘された問題の一部で、潜入調査の間、ピザハットの厨房ではほぼ毎日賞味期限ラベルの改ざんが行われていたという。また、改ざんは管理職が店内のカメラの死角で行い、他のスタッフにも隠されていた。

   動画や写真とともに記事が公開されるとSNSで大炎上し、ピザハットは即日、2店舗を閉店し調査を始めたと発表した。また、北京市の市場監督管理局も立ち入り検査に入った。

コロナ禍と原材料高騰で収益のプレッシャー重く

   実は記者が潜入した店舗の1つは、今年3月に賞味期限の改ざんで当局から5万元(約100万円)の罰金を科されていた。にもかかわらず不正が続いており、食の安全・安心を巡る問題が後を絶たない中国でもさすがに衝撃が走っている。

   ピザハットを運営するヤム・チャイナは、米ヤム・ブランズから2016年に独立し、中国でKFCや火鍋チェーンの小肥羊を運営する巨大飲食チェーンだ。ピザハットは、まだ中国の飲食業が未成熟だった1990年に北京に1号店をオープンし、2022年3月末時点で中国本土600以上の都市に2600店以上を展開している。

   ただ、コロナ禍と原材料価格高騰の逆風で最近の経営は厳しく、ヤム・チャイナの2022年1-3月期の純利益は前年同期比56%減少し、1億200万ドル(約140億円)に落ち込んだ。

   新京報はヤム・チャイナの元管理職の、「会社の食品安全に関するルールは非常に厳しいが、店長は同時にコストのプレッシャーにもさらされている」との声を伝え、廃棄でコストが増え赤字に陥ることを危惧した店舗責任者が、ジレンマの末に不正を行ったのではとの見方を伝えた。

【連載】浦上早苗の「試験に出ない中国事情」

浦上早苗
経済ジャーナリスト、法政大学MBA兼任教員。福岡市出身。近著に「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。「中国」は大きすぎて、何をどう切り取っても「一面しか書いてない」と言われますが、そもそも一人で全俯瞰できる代物ではないのは重々承知の上で、中国と接点のある人たちが「ああ、分かる」と共感できるような「一面」「一片」を集めるよう心がけています。
Twitter:https://twitter.com/sanadi37

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