女子レスラーが引退を決める時 全盛期でも、ボロボロになっても美しい

【連載】アイスリボン・藤本つかさ 素顔の女子プロレス

   始まりがあれば、終わりがある。どんな分野でもそう。

   今日は女子プロレスラーの引退についてお話しします。

私が表紙の『週刊プロレス』で、真白は新人賞を受賞
偉大な豊田真奈美さんの引退試合の、最後の相手をさせて頂きました!
最近だと、春輝つくし引退試合は隣にいました
ゆるたんからのお祝い画像
進垣リナさん引退ロード。この写真大好きです
長浜浩江さん引退ロード。他団体の後輩でしたが、とても思い入れがあります
ベストフレンズ興行。これが最後の対戦って知ってました
名言箱の南月たいようさん!先輩でありお友達であり、かれこれ14年くらいの間柄です
紫雷美央さん引退試合。クローズユニットでラスト!
松屋うの、引退試合。最後は対戦相手でした
ジェイラ!英国に行き、引退試合の相手をさせてもらいました
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30歳で引退するだろうと

   14年プロレスをやっていると、たくさんの人の「引退」を見送ってきました。

   最後のバトルロイヤルなども合わせると、引退試合に関わったのは、9選手。中にはデビュー戦と引退試合どちらも務めさせてもらった選手もいました。

   ギャルレスラー「寿ゆり」です。

   彼女は強烈なインパクトを残して登場し、強烈なインパクトのまま去っていきました。私が結婚発表した時は、まるで「ゆるたん」(※寿ゆりのニックネーム)と結婚したかのような画像まで送ってもらい(笑)、とてもうれしかったです!

   最後の相手となると、緊張もするしプレッシャーもあるし、寂しい感情だけでは過ごせません。プロレス人生を「介錯する」という重要な責任があります。豊田真奈美さんの時がそうでした。なので、それまで自分自身もけがをしないよう、心と身体のメンテナンスが重要になってくるのです。引退試合の相手に選ばれるのは名誉なことですが、そのプレッシャーに飲み込まれないメンタルも大切です。

   それでは、女子レスラーが引退を決断するのは、どんな時でしょう?

   けが、病気、年齢、周年の区切り、結婚、他にやりたい夢が見つかる、環境の変化、やりきった、が多いです。

   けがや病気はドクターストップがかかるため、本人の意志と反しますが、こればかりは命に関わるため言うことを聞くしかないです。一番優先すべきは「命」ですから。

   また女子の場合は、「30歳で引退を決めていた」「3年で引退」「10 年で引退」「寿引退」など、区切りで考えている人もいます。かつて新人時代の私は、30歳で引退するだろうと思っていました。もうだいぶ過ぎましたが...。

   引退理由は人それぞれ。全盛期での引退も美しいし、体がボロボロになってからというのも美学でした。

「辞める」に反対しないワケ


テキーラ沙弥引退!最後は38人掛けでした

【もし、所属選手から進退の相談を受けたらどうする?】

   過去、何度も相談されています。

   まずその選手が悩んだ末の結論なのか、単に止(と)めてほしいだけなのかを、会話しながら確認します。ただ、女の子の場合「辞める」といったら、止めても辞めるので、私は基本反対しません。「辞めるまでにどうしていこうか」などを話し合う時間に充てます。

   たくさんの人の引退を見送ると、自分の時はどんなふうに最後を迎えるのだろうと想像します。

   とある人が言っていました。

   プロレスラーにとっての引退式は「生前葬」だと。

   必ずやった方がいい。そしてそのタイミングは、今だと直感で分かる日が来るからと。

   南月たいようさんっていう人なんですけどね。

   いつか訪れるであろう終わりの時。「今だ」と思うのはいつで、どんな気持ちでその時を迎えるのだろう。

考えて考えて出した答え

   2022年9月29日、アイスリボンの真白優希が引退会見を行いました。とても明るい会見だったと思います。

   「もったいない」という声もたくさんありますが、彼女自身たくさん考えて考えて出した答えです。デビュー当時から、3年と期間は決めており、その後は医療系に進みたいと私にも当初から話してくれていました。

   3年のプロレス生活を逆算して、何をしていこうか考えていたと思います。チャンピオンになり、「ガチャ王」として海外から認知され、アイドルとしてCDデビューし、後楽園のメインイベントも経験。デビューしたての頃は、試合開始数秒でギブアップする摩訶不思議なへなちょこレスラーだったのに、気付いたら強くたくましく成長していました。

   ただ、私達は引退を受け入れる時間を十分に与えられていましたが、お客さんは「昨日の今日」なので、受け入れるまでに時間がかかると思います。それはそうです。

   私が女子プロレスを好きなのは、「華やかさ、強さ、儚(はかな)さ」を兼ね備えているから。真白優希は女子プロレスラーでした。寂しい気持ちになるかもしれませんが、終わりがあれば始まりもある。これは新しい縁のスタート。後ろではなく、前を向きたいです。

「真っ白なあなた(YOU=優)は希望だよ」

   これは真白優希の名前の由来です。私が名付けました。

   違う世界の真っ白なキャンバスを、また真白色に染めてほしいな。

   といってもあと3か月ありますからね!何をしでかすか分からないところに魅力がある選手。最後までアイスリボンの真白優希をよろしくお願いします!

藤本つかさhttps://twitter.com/tsukka0730
女子プロレスアイスリボン所属(https://iceribbon.com/
宮城県利府町出身。利府町観光大使。
東北福祉大学卒業後、広告代理店に就職。上京後、芸能事務所にスカウトされる。プロレスを題材とした映画「スリーカウント」出演のため、2008年プロレス団体アイスリボンの練習に参加したところからプロレスラー人生が始まる。
2015年アイスリボン取締役選手代表就任。18年には東京スポーツ新聞社制定女子プロレス大賞受賞。21年8月23日デビュー13周年を迎える。

【アイスリボン公式YouTube】
https://youtube.com/user/iceribbon
【藤本つかさ公式YouTube】
https://youtube.com/channel/UC_V0vfhOMxE9bCVvxjJ9JBw

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