ハロウィーンで警察官や消防士の仮装ダメ 「法令に定められた制服」に注意

   ハロウィーンには、仮装をして街に繰り出す人が少なくない。中には、警察官やナースなど、制服のある職業のコスプレも見られる。韓国ソウル・梨泰院で2022年10月29日に発生した、多数の犠牲者を出した事故では、事故対応が遅れた理由の1つとして「警察コスプレ」が上がっている。これに関して、本職の警官をコスプレと誤認したために「人々があまり退かなかった」という証言を、韓国紙「朝鮮日報」が31日に報じた。

   こうしたコスプレには、日本では法的に問題はないのか。弁護士法人・響の古藤由佳弁護士に取材した。

2022年10月30日の渋谷(写真:つのだよしお/アフロ)
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軽犯罪法違反の可能性

   古藤弁護士は、「『資格がないのにかかわらず、法令により定められた制服もしくは勲章、記章その他の標章もしくはこれらに似せて作ったものを用い』たとして、軽犯罪法に違反する可能性があります(軽犯罪法第1条15号後段)」と指摘。違反すると拘留(1日以上30日未満刑事施設に収監される)または科料(1000円以上1万円未満の金銭の支払をさせられる)に処される可能性があるという。

   警察官は警察法、海上保安官は海上保安庁法で、救急隊員と消防士は消防法で「法令に定められた制服」があるため、一般人がコスプレをした場合には違反になる可能性があると説明。一方で、「看護師は法令に定められた制服がない」ため、軽犯罪法違反にはならないとした。

   また、「特殊な例ですが」、と前置きをした上で、国内で正当な理由なしに米軍の制服、またはこれに似た衣服を着た場合にも拘留または科料に処されると付け加えた。これは、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法(昭和二十七年法律第百三十八号。第9条)」に基づくものだ。

基準は「誤認させたか否か」

   古藤弁護士によると「軽犯罪法上問題とされるのは、本当は資格がないのに、資格があると誤認させる行為」にあるといい、問題になるかどうかは「一般人が見て、コスプレした人を本物(の有資格者である)と誤認させたか否か」が判断基準になる。そのため、「衣装そのものの完成度や、コスプレをしている場所・周囲の状況などにより判断されます」。

   完成度の高いコスプレは誤認させる可能性も高まるため、「一般的には問題になる可能性が高いでしょう」とした。 一方で、完成度は高くても明らかに日本または米軍の制服ではないと分かるものについては、問題ないだろうとした。演劇などの舞台上での制服の着用も、本物でないことが明らかな場面であるため「問題にはなりません」と古藤弁護士。

   医療従事者のコスプレで、赤十字やそれに類似したマークが意匠として使われている場合についてはどうだろうか。古藤弁護士の説明は、こうだ。

   「昭和二十二年法律第百五十九号(赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律)第1条」に、「白地に赤十字・・・又はこれらに類似する記章もしくは名称は、みだりにこれを用いてはならない」との定めがある。同法2条・3条では、日本赤十字社及びその許可を受けた者以外が、赤十字マークを利用することを禁止している。これに違反した場合には、「6月以下の懲役、または30万円以下の罰金」に処せられると、同法4条に書かれている。そのため、一般の人が許可なしで、公共の場で赤十字マークのあるコスプレをするのは違法行為になるとした。

   なお、事情が分かっている人しかいない限られた場所でコスプレをするのは問題ないとも説明した。

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