「鳥インフルエンザ」ニワトリ以外も カモ、ツル、ハクチョウと野鳥に広がる

   鳥インフルエンザの感染が急拡大しているが、国内では鶏だけでなく、渡り鳥や野鳥からも多数の感染が確認されている。こちらも例年以上のハイペースで増えている。渡り鳥は、鳥インフルエンザの「運び屋」とされているだけに、環境省は注意を呼び掛けている。

飛来したナベヅル類から感染が見つかっている
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環境省がモニタリング

   鳥インフルエンザは、渡り鳥が海外からウイルスを持ち込み、国内の鶏などに感染が広がる、とされている。このため環境庁は毎年秋の渡り鳥シーズが始まると、渡り鳥の飛来状況を、人工衛星などを利用して探査。渡り鳥や野鳥がウイルスを保持していないか、死体や糞便などをもとに分析している。

   環境省のウェブサイトによると、今シーズン(秋から春)の感染第1例目は2022年9月25日に神奈川県伊勢原市で見つかった、死んだハヤブサ。H5N1亜型高病原性インフルエンザに感染していた。さらに、宮城県栗原市のマガン、鹿児島県出水市のナベヅル、香川県丸亀市のコウノトリ、宮崎県日向市のマガモ、鳥取市のカワウ、北海道斜里町のオオセグロカモメ、岩手県一関市のオオハクチョウなど全国各地で次々と感染が見つかった。

   23年1月13日までに、1道23県で153件にのぼる。昨シーズンは1道1府6県107件。その前のシーズンは18道県で58件だったから、今シーズンの多さが際立つ。シーズンは5月ごろまでとされ、例年、春以降にかなり増えるので、今シーズンは、最近では異例のハイペースで感染が拡大している。

環境中のウイルスの濃度が非常に高い

   今年、特に感染が目立つのは鹿児島県の出水市だ。飛来したナベヅル類から感染が見つかっている。同市周辺では鶏の鳥インフルエンザも多発している。

   南日本新聞(12月17日)によると、昨年末、鹿児島県内の養鶏場では鳥インフルエンザが過去にないペースで広がった。2022年11月17日に出水市で最初の疑い例が確認されてから、1か月間で9例が立て続けに発生。鹿児島県内で飼われる採卵鶏の約1割に相当する約120万羽が殺処分された。

   出水市はツルの飛来地として知られる。今季は死んだり弱ったりして回収された個体が例年の10倍以上。11月中?下旬のピーク時には1日に90羽以上が回収され、この頃から養鶏場での感染も相次いだという。 同紙の取材に、鹿児島大学共同獣医学部の小澤真准教授(ウイルス学)は「出水は今季、環境中のウイルスの濃度が非常に高く、防疫が難しい地域と言える」と指摘している。

靴で糞を踏まない

   今シーズンは全国で1100万羽以上の鶏が鳥インフルエンザで殺処分になった。鹿児島以外の各県でも神経をとがらせている。

   石川テレビによると、石川県内では1月4日にハヤブサの死骸から、8日にはフクロウの死骸から鳥インフルエンザの陽性反応が確認された。

   3キロ以内にペットとして飼われている鶏がいたため、県はすぐに立ち入り検査。さらに死骸が見つかった場所から半径10キロ圏内の養鶏場なども調べたが、今のところ異常はないという。

   環境省はウェブサイトで以下のように注意を呼び掛けている。

○同じ場所でたくさんの野鳥などが死亡している場合には、お近くの都道府県や市町村役場にご連絡ください。
○死亡した野鳥など野生動物の死亡個体を片付ける際には、素手で直接触らず、使い捨て手袋等を使用してください。
○野鳥の糞が靴の裏や車両に付くことにより、鳥インフルエンザウイルスが他の地域へ運ばれるおそれがありますので、野鳥に近づきすぎないようにしてください。特に、靴で糞を踏まないよう十分注意して、必要に応じて消毒を行ってください。

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